こんにちは。
墨絵師のべべ・ロッカです。
水墨画の風景画で一度は描いてみたいのが、富士山ではないでしょうか。
描いてみたい!きれいだしカッコいいのよね!
でも富士山・・・難しそうです・・
大丈夫。
今回紹介するのは、水墨画ならではの技法を使いますが、すぐ描ける簡単で面白い描き方です。
動画を見ながら解説しますので、参考にしてみて下さい!
山の描き方は2種類あります。
線描きと面描きです。
・鉤勒法(こうろくほう)・・・輪郭線を描く方法
・没骨法(もっこつほう)・・・輪郭線を描かず面を塗ることで描く方法
そして、今回使う方法は、面で描く没骨法に近い感じですが、ちょっと違うんですね〜〜
それを紹介していきます!
目次
富士山の描き方〜準備〜
動画では「山」となっていますが、富士山をイメージして描かれています。
この動画を参考にしてくださいね。
富士山を描くための技法
今回は、富士山を「片ぼかし」という技法を使って描きます。
富士山は四季を通じて美しい山ですが、特に山頂に雪が積もったシルエットはとても素敵ですよね。
私は関西の人間なので、新幹線で移動する時は必ず撮影してしまいます!
そんな冬の富士山、雪が積もった白い山を描いていきます。
さて、白い雪を描くにはどうするか。
一般的に白いものを描く時には、白い絵の具で塗るのが普通ですが、水墨画では
「描かずして描く」という考え方があります。
紙の生地の色をそのまま残し、周りを塗ることで残した部分を白く見せるという、白抜き的な方法がそのひとつ。
「描かずして描く」のは水墨画の基本的な考え方の1つではありますが、白い絵の具を使う場合もあります。
あの雪舟も白く塗ってた?(国宝)↓
さて、今回は雪山を描かずして描くために、少し変わった筆を使っています。
連筆という種類の筆ですが、ハケと似ていて広い面を一気に描くのに便利な筆です。
連筆ってハケと同じみたいに見えますが、どこが違うんですか?
よく似ていますが、ハケは直線的にバーっと一気に塗ることができて、連筆の方は、もう少し繊細なタッチで表現できます。
筆がいっぱいついていますから。
面白そうだけど、連筆なんて持ってないよ、なんか高級そうだし。
普通の筆じゃあダメかなあ?
大きな作品を描く場合は、大きな筆は持っておいた方が楽に描けるのでオススメです。
今回は、コンパクトに描くので、普通の筆で大丈夫。
ハケを持っていたら、使ってみてください。
もし普通の筆しかなかったら、山を小さめに描けばOKですよ!
富士山を描くための道具
今回は、水を多く使う風景画です。
スムーズに描けるよう、事前にちゃんと準備をしておきましょう。
・ハケなど大きめの筆(あれば)
・墨
・大きめの平らなとき皿
・和紙(色紙サイズの楮紙を使います)
・フェルト下敷き(白)
・たっぷりの水(水入れ)
[描く順番]
①墨がすれたら、必ずとき皿3枚にそれぞれ淡墨(薄い墨)・中墨(少し薄めの墨)・濃墨(濃い墨)と分けて作っておきます。
特に淡墨をたくさん使うので、途中でなくなって慌てないよう多めに用意しておきましょう。
②最初に淡墨から使います。
筆を水でよく洗い、淡墨をたっぷりと含ませてスタート。
③山が出来たら、空の部分(山の上部)を淡墨で全部塗ります。
④山のふもとの樹々などを、淡墨・中墨・濃墨の順で描きます。
このような流れです。
富士山の描き方〜実際に描いてみましょう〜
片ぼかし法で描く
まず、山のラインを描かずして浮立たせるため、淡墨を使って山の外側(空)を塗ります。
これが「片ぼかし法」です。
線描きで山のアウトラインを描くのではなく、周りを塗って、白い山(雪山)を表現する方法です。
描き始めが大事ですが、必ず紙をはみ出すようにしてスタートしてください。
はみ出しておかないと、自然な山のラインが描けませんので注意です。
また、はみ出したり、水をたくさん使うので、紙の下にはフェルトの下敷きなどを敷いて置くと安心です。
フェルトの下敷きは、白を使ってください。
黒や緑や模様のあるものは、和紙に透けて見えるので墨の濃淡などが目で確認しづらくなってしまいます。
山のラインは最初から最後まで一気に描かなくても大丈夫です。
今回は2回止まって、3回に分けて描きます。
周りを塗ることで、富士山の形がきれいに浮かび上がりました。
次に、空の部分を一気に塗っていきます。
これも淡墨をたっぷりと使います。
メインとなる部分、富士山と空が出来ました。
空は多少塗りむらができても大丈夫です。
淡墨でサーっと塗っていけば、筆の筋もあまり目立たないと思います。
今回は、富士山の特徴的な山肌を描くことは省略しています。
抽象画的ですが、真っ白な雪山という表現です。
富士山のふもとの樹々を描く
次に、山麓の樹々、湖の部分を描きます。
最初に、軽くあたりをつけるようにして、筆の穂先を使い横に線を引きます。
しっかり線を描くのではなく、ゆるゆると頼りない感じで。
線が引けたら、樹々を描きます。
淡墨を筆に含ませてから、穂先に中墨を取ります。
これは、「三墨法」という墨の取り方の応用です。
淡墨、中墨、濃墨と、濃さの違う墨を筆に順番に含ませることで、描きたいものに濃淡をつける方法
筆をタテにして、穂先で描いていきます。
樹々の部分ができたら、最後に湖の水を描きます。
ハケだときれいに塗れますがピシーッと直線的になりすぎるかもしれないので、逆に普通の筆のほうが良いかもしれません。
筆にたっぷり目に水を含ませ、ごく薄い墨でさーっと引きます。
水の部分は、はじめ淡墨で、さらに少し墨を足して重ね塗ります。
【水墨画の描き方】富士山(山)のポイント
最後に大切な仕上げ
白く残した山の部分を見ると、水がブワーッとにじんでいますね。
動画では、描き終わったここで終了していますが、この後に大切な作業があります。
ハケのような大きな筆(あれば)で、白い山の部分を含め、画面全体を水で濡らしておきましょう。
そうやって、最後に水だけで全体を濡らしておくと、乾いた時にきれいな仕上がりになりますよ!
最後に水だけで全体を濡らしておく作業はとても大切。
和紙の灰汁をためず、紙の外に掃き出すことことができます。
シンプルなシルエットがおすすめ
富士山は誰もがイメージしやすいシンプルな形をしていますので、絵を見て「これは富士山」だとすぐわかるのも魅力。
水墨画の基本的な要素として
「描くものの特徴を引き出し、なるべくシンプルに」という引き算的考え方があります。
つまりゴチャゴチャと描きすぎてはダメなんですね。
本来、水墨画は、すっきりシンプルな美意識こそが最高にクールだとされる「禅」の精神がベースになっていますので、あれもこれもと描きすぎてしまうと、粋ではない絵と見なされてしまうかも!
粋でおしゃれな絵が描きたいな!
同感です!
富士山の場合、スッキリした美しいラインが特徴なので、初心者でも描きやすいですね。
富士山は、いろいろな方角から眺められ、それぞれに富士山がきれいに見える景観スポットがありますね。
また、見る方角によって、微妙に富士山のシルエットが変わります。
富士山はどの方位から見ても、ほぼ左右対称である形が、美しいと讃えられています。
一方、動画で描いた山は、左右を少し非対称にしたシルエットで描いています。
今回は、山肌のアクセントや陰、冠雪の表現などは一切なく、片ぼかしで白く残しただけ。
なので、形に演出をしているのですね。
もし、富士山に興味が出たな〜という方は、葛飾北斎の『富嶽三十六景』がオススメです。
様々な富士山が描かれていて、勉強になるし見ているだけでとっても楽しいです。
著作権も切れている昔の作品なので、ネットでもたくさん見ることができますよ!
まとめ
今回は、片ぼかしで富士山(雪山)を描く、でした。
風景画に興味のある人
富士山を描いてみたい人
に参考になればと思います!
それでは、また。
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