日本らしい植物のひとつと言えるのが、松ではないでしょうか。
お祝い事のシンボル「松竹梅」のメンバーでお馴染み。
水墨画の画題としても親しみ深いものですね。
吉祥デザインの代表選手とも言える松、描けるようになっておいて損はありません!
今回は、シンプルな動画を参考に、松の描き方を解説していきたいと思います。
下記の動画をぜひご覧ください。(2分19秒 音楽が鳴ります)
目次
水墨画の松の描き方ー松の木
松は
・木(幹)
・葉
・小枝
・ふわっと仕上げ
の4段階に分けて描いていきます。
それでは松の木(幹)の部分からスタートです。
墨を使います。
松の木は筆の腹を使う(側筆)
筆の腹をめいいっぱい使って、ガッ といきます。
ここは遠慮なく大胆に。
筆の腹を使う描き方を「側筆」と言います。
左にガガガッと払い、いったん筆を紙から離します。
筆が宙に浮いています、勢いを感じますね。
次に、最初のスタート地点から次に右側へ枝を伸ばしていきます。
枝野少し細くなっているところは、筆を縦にして描いていますが、これを「直筆」と言います。
こんな風に、側筆や直筆を混ぜ合わせながら勢いよく描くと、筆の水分も紙に吸われて、筆の穂先がボサボサとなっていますが、気にせずワイルドにいきましょう。
ボサボサになれば、いい感じの「カスレ」も作ることができますよ!
太さに変化もあると良いですね。
カクカクとカーブをつけつつ、右にギャっと払います。
松の木肌はこんな感じ
松といえばワイルドでゴツい印象がありますよね。
松の木肌。
こういうカパカパした質感が特徴。
このカパカパを、「線描き」で軽く付け足すこともありますよ!
(今回は省略です)
水墨画の松の描き方ー松の葉
松の木に負けない個性と勢いを感じるのが、松の葉です。
松の葉は筆の先を使う(直筆)
さて、松の葉です。
先ほどは違って、細い線を描いていきます。
細い線は、筆をタテに持ち穂先を整え、
「直筆」で描きます。
ところで直筆って、
「じきひつ」って読むんじゃないの?
「直筆」の読み方は
「じきひつ」
「ちょくひつ」
2種類あります。
この違いについてハッキリさせておきましょう。
【直筆(じきひつ)とは?】
直筆(じきひつ)とは、特定の個人が直接書いたもの、という意味です。
例をあげると、「スター選手の直筆サイン」などという表現、よく目にしますよね。
この場合は、「じきひつ」と読みます。
ただ、誰もかれもには当てはまらないでしょうね。
この言葉を使うときは、「印刷ではなく直接描いたもの(直筆)だから価値がある」という意味が込められています。
なので、ある程度著名な人や、画家・書家などに限られるような気がします。
【直筆(ちょくひつ)とは?】
一方、「ちょくひつ」と読む場合は、水墨画のみで使用するかもしれません。
紙に対してなるべく直角に近い感じで筆を立て、筆の穂(毛)の中心を使って描く技法のことを指します。
言葉で説明するとわかりにくいですが、ペンなどの筆記具で字を書く時と同じ、とイメージしてみてください。
「側筆」が穂(毛)の長い部分(腹)をめいいっぱい使って、面を塗るように描くのに対し、
「直筆」は筆の先を使うので、主に線描きなど細いものを描くときのスタイルです。
いろんな技法については、こちらの記事で解説しています!↓
さて、少し脱線しましたが、どんどん松の葉を描いていきましょう。
さあ、ここで松の葉。
どんなチカラ加減でどんなところに注意して描けば良いか、そこのところを解説しましょう!
松の葉を描くときのヒント
松もたくさん種類があり、少しずつ形は違うかもしれませんが、松の葉って基本の形が「こうなってるんだな」と確認しておきましょう。
右の物体をご覧ください。
2本1セットになっている、これが松の葉の単体です。
葉というか、もはや針ですね。
(針葉樹ですから)
そして、左側。
枝からこの単体(2本1セット)の葉がこんな風にワサワサとたくさん出ている。
それが松の葉です。
次に、葉の集合した様子を、
①葉の集合全体の形
②葉の描き方(方向)
③葉を描き方(チカラ加減)
について、それぞれチェックしてみたいと思います。
①葉の集合全体の形
左の90度くらいから、少しがんばって180度くらいの集合体も組み合わせると、葉のワサワサ感がアップします。
逆に、葉が少なすぎると松っぽさが減少するし、寂しい感じになるので、要注意。
②葉の描き方(方向)
線描きの方向は、外から内、内から外、細く強い線が描ければ、どちらからでもOKですが、基本は、外から内に向かって描きます。
③葉を描き方(チカラ加減)
外向き、内向きの描き方のうちで、
外向きで描く線は、ピーンと勢いに任せてハネてはいけません。
・・・え!
外向きならピン!ピン!てハネで描くと楽じゃない?
ハネたい気持ちはわかるのですが、ハネることで、チカラが外向けにシュウっと抜けてしまい、弱い線になりがちなんです。
ヘナっと弱くなると、針っぽい松の葉の強さがなくなって、柔らかい葉っぽくなってしまうんですよね。
逆に、ピタと止めるとチカラが溜まるので、強い線が描けます。
細い線を、ダンゴにならずピタと止めるのはまあまあ難しいかもしれません。
ですが、これぞ痛そうなシャープな葉こそ、松の葉の個性。
たまにハネるのは良いですが、基本は頑張って強い細い線、目指しましょう!
さあ、松の葉が描けました。
松の葉はとにかく痛そう!な感じ
葉っぱはとにかく「痛そう」なシャープ感が出るとOK!
そしてミッシリと集合していますね。
水墨画の松の描き方ー小枝
では仕上げに入っていきましょう。
松の小枝を付け足していきます。
松の小枝は濃い墨でアクセント
濃いめの墨をしっかり取り、筆の穂先を使いシャープにカクカクと描きます。
上の松の画像を見てみると、だんだんと細い枝となって、カクカクと横に張って広がっていくのがわかりますね。
そのイメージで、あらかじめ描いてある葉の根元に描き足してゆきます。
葉をある程度描いてから、まとめるように小さい枝を描くイメージです。
松の枝はうねってます
枝を観察!
松の木は本当に個性があり、「松だ」とすぐわかりますよね。
太い幹から枝分かれしてゆき、だんだん細くなった先に松の葉があるわけですが、横にカクカクとうねりながら広がっていくのが特徴。
では、松の木(幹)・葉・枝ができたので、次に最後の仕上げをしたいと思います。
水墨画の松の描き方ー松の演出
松の仕上げは、葉の上をフワッとさせます。
「フワッ」とは何なのか。
さっそく見てみましょう。
「フワッ」
墨でずっと描いてきたので、今回は、
・濃草(濃い緑色)
で「フワッ」します。
はい。
実際に松の木に、こんなモヤかカスミがかかっているわけではありません。
「フワッ」は、視覚的な演出なのです。
なんでこんな演出をするかというと、これって、松の葉の密度を表現しているんですね。
シャープな松の葉がいっぱい密集した状態、これが松。
しかし、これを実際の通り線描きで表現するために、葉を描きすぎると、ちょっとしつこい感じになってしまいます。
ということで、ある程度の線で葉を描いたあとに、さりげなく「フワッ」で仕上げると、描きこみすぎることなく、スマートに密集感を表現することができるのですね。
この「フワッ」テクニックは、松の絵の表現としてはわりとメジャーなものなのです!
こんなイラストなど見たことがありますよね。
この、サザエさんのヘアスタイルのような丸っこい部分、これが「フワッ」ですね。
松竹梅のイラストで比較してみても、梅・竹はそのままの線描きがなされていますが、松だけは、葉と思われる線(3本または数本)の周辺をフワッの線描きで囲んでいます。
これを水墨画で描くと・・・
こうなる。
というわけですね。
今後とも、「フワッ」をご贔屓によろしくお願いいたします。
松ぼっくりで最後の仕上げ
フワッの後、密集した葉の中心部分に、松ぼっくりを描きましょう。
使う色は金でゴージャスに。
ゴールド使いで、地味な松がパッと輝きますので、華やかにしたい方にはおすすめ。
この金は、水で薄めず筆にぽってりたっぷり取って、置きましょう。
なお、金色は、固形の顔彩でも描けますが、スッと絵の具が出せるチューブタイプのものが楽です。↓
(私が使っている金の絵の具)
金色には「赤金」「青金」とありますが、「赤金」が鮮やかでおすすめです。
ちなみに、チューブの絵の具は劣化スピードが速いので、「金をふんだんに使う」という方以外は、最小サイズをチョイスし、購入後は早めに使い切ってくださいね。
↑最小サイズ
松の完成です!
松ぼっくりって何だろう?
松という植物、奥深く、種類もたくさんあって面白い植物ではあるのですが、今回は軽く最後に「松ぼっくり」だけに触れておきたいと思います。
「松ぼっくり」とは、松の木の「果実」のことです。
中にあるタネを守るのが松ぼっくりの役割なのですね。
カサカサの質感のせいか、果実っぽさがほぼ感じられませんが、正式名称は「球果」といいます。
松は針葉樹ですが、杉・檜にも同じく球果という果実が成ります。
針葉樹特有の果実の形なのです。
でも、松ぼっくりという愛称がつけられているのは、松だけらしいですね。
ホントにユニークな物体。面白いです。
まとめ
今回は、松の描き方を紹介しました。
・水墨画作品として
・年賀状(干支に関係なくいつでもOK)
・ポチ袋や箸袋、慶事(おめでたいこと)に関するデザインとして
お祝いごとにぴったりで、存在感のある松。
ゴツい木(幹)を描かずとも、葉の部分のみ抜粋して(フワッ付きで)、デザインぽくさらっと描いても十分、絵になります。
ワイルドな松ですが、私たちの暮らしの身近にあって、描いて楽しく・使い勝手の良いテーマである、ということをお伝えして、今回の解説を終わりたいと思います。
ぜひ描いてくださいね!
それでは、また。
こんにちは。
墨絵師のベベ・ロッカです。