水墨画に興味がありますか?
興味はあるけれど、とにかくわからないんだ、というあなたへ。
私も、大人になってからのド素人の状態から描けるようになりましたから、安心してください。
今回は、「水墨画の道具の特徴」についてじっくり解説したいと思います。
・水墨画を始めたい
・水墨画に必要な道具について
・水墨画について知らない
という、初心者の方に向けての内容です。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。
目次
水墨画について特徴を学ぼう
初めに、水墨画について少し紹介したいと思います。。
水墨画は、絵画の中ではちょっぴりレアなジャンルかもしれません。
だから少し、わかりづらい部分があると思います。
水墨画ならではの道具の魅力や特徴を知れば、上達もはやく、より楽しみながら描けますよ!
まずは簡単な特徴を順番に紹介します。
①水墨画は水を使う
②形から入って楽しめる
③匂いがない
④他の絵画と違う表現ができる
①水墨画は水を使う
水と墨の画と書いて、「水墨画」。
水墨画を描くときに、水はとっても大切なもの。
もちろん、他の絵画でも水を使いますし、水墨画でも描きたい表現方法によっては、水をほとんど使わない場合もあります。
ですが、やはり水墨画の魅力を最大限に引き出してくれるのは、「水」。
墨と水の相性は抜群で、にじませたりかすれさせたり、水のちからを借りて、さまざまな技法を使うことが可能になります。
このスーパー助っ人と仲良くしない手はありません。
水を使いこなし、友達になることで、表現の幅は無限に広がるんです!
②形から入って楽しめる
何でも形から入るタイプです、というあなた。
私と同じですね?
水墨画は他の絵画のジャンルと同じく、いろんな道具を使います。
でも特に、「一生物」といえるような、または消耗するとはいえ、「愛着が持てる道具」を使うのは、水墨画ならではじゃないかな?と思います。
道具選びがめんどくさいと思っていたあなたにこそ、聞いてほしいです。
例えば、硯。
石を掘って、成形したものが硯です。
美しいビジュアルの硯は、芸術品ともいえます。
原始人みたいに石を使う絵、なんて他にありますか?
石は、滅多なことでは壊れません。
一生物にできます。
(使わないときは重しになりますよ)
そして、墨。
この令和の時代に墨ですよ?
墨はコスパも良く、絵の具と違ってなかなか減りません。
さらに良い香りがします。
良い香りの固形物を水を使ってすり、液体にして使うのです。
大根おろしの要領ですね。
ひと手間かかります。
他にも、筆や和紙など、普段縁のないちょっぴり古風な画材を使って描く水墨画。
面倒だ、さっさと安く揃えてしまいたい、という気持ちもわかります。
でも・・・
道具を揃える段階から、すでに非日常な体験が始まっているのが、水墨画。
ちょっと手間がかかるのを逆手に取って、お気に入りの道具を手に入れる、という贅沢な時間を楽しむのもあり。
道具選びからすでに楽しめるというのは、水墨画ならではの魅力ではないかと思います。
③匂いがない
水墨画で使う画材には、匂いがありません。
水、墨、顔彩など。
唯一匂いがあるのは「墨」ですが、むしろ墨の匂いは香料が入っているためで、とても良い香りがします。
墨の匂いの好き嫌いはあるかもしれませんが、あたたかみのあるウッディ系の香りで、多くの人が「良い匂い」だと感じるようですね。
顔彩の匂いも、キツくないですよ。
鉱物や膠などが入っているので、鼻を近づけると絵の具っぽい匂いはしますが、描いている際に気になることはありません。
顔彩は顔料を固形の絵の具ですので、水で溶かして使用します。
使った後はそのまままた固まるので、衛生的にもコスパ的にも良いですね。
部屋の中に絵の具のキツイ匂いがつくのが嫌だな、と思う人には水墨画は全く問題ないと思います!
④他の絵画と違う表現ができる
水墨画は、「失敗が許されない、一発勝負の絵画」というイメージを持たれやすいです。
それは、水を吸う和紙に下描きなしでいきなりサッと描く、というスタイルを指しているのだと思います。
確かに水墨画はさまざまな技法があるので、魔法のように紙の上に濃淡を作ったり、「え、これどうやってこんなふうに描いたの?」というような不思議な仕上がりを作ったりということが得意です。
これらはみな、魔法でもなく、気合いでそうなるのでもなく、ちゃんと化学的なタネと仕掛けがあります。
冒頭で述べたように、その手助けをしてくれるのが「水」です。
水を使ってあらゆる面白い表現ができるのが魅力です。
水墨画ならではの技法としては、伊藤若冲の「筋目描き」とか、尾形光琳の「たらしこみ」などが有名ですよね。
水墨画に必要な道具について
水墨画は、机の少しのスペースがあれば簡単に始められる手軽さが魅力です。
こちらの記事も参考にどうぞ↓
最初に揃えておきたい基本の道具を紹介します。
・筆
・墨
・硯
・紙
・水入れ
・とき皿
・下敷き
・顔彩
・タオル(雑巾)
ひとつひとつ選ぶのが面倒なあなたには、入門セットがありますよ。
足りない道具は、まず100円ショップをチェックしてみるのも良いかもしれません。
全部、というわけにはいきませんが最近の100円ショップは画材も豊富ですので、道具によってはアリですよ。
・とき皿
・タオル
・水入れ用容器
・フェルト下敷き
・書道用半紙
・・・など。
筆
初めは小・中サイズの筆が2本あれば十分です。
・線描き用(小サイズ)
・面描き用(中サイズ)
という風にわけて使うと良いですね。
線描き用は、穂先を使うので、毛はやや腰のあるしっかり目のものが良いでしょう。
面描き用は、筆の腹を使って彩色する時に使うので、柔らかめの毛が良いですね。
筆は大事に使えばかなり長持ちします。
線描き用
書道筆とはなっていますが、「きくや筆」さんのイタチ毛細筆です。
「きくや筆」さんは、私もいつもお世話になっている大阪市の老舗の筆屋さんです。
弾力があり硬めのイタチ毛は高級品。
やや細いですが、最初に試すには良いですね。
面描き用
初心者の方のはじめの1本目として紹介している、筆(長流)はこちら。
長流はオールマイティに使える便利な筆です。
彩色用にも良いですよ。
↓筆についての詳しい記事はこちらをどうぞ!
墨
色々な種類がありますが、墨は大きく「青墨」と「茶墨」の2種類に分かれます。
書道用の使い古しでも、安い墨でもとりあえず使ってみましょう!
以下は、私も使用してみて良かったものです。
茶墨(玉章)
茶墨は、菜種油などの煤から作られます。
そのため美しい光沢が特徴です。
新しく入会された初心者の方にはこちらをおすすめしています。
発色がきれいで墨下りもよく、黒々としっかりすれる良い墨です。
青墨(蒼苔)
青墨は、松やになどの煤から作られます。
松やにを採取する工程が大変なため、最近は代用品として鉱物の煤から作られることもあるようです。
青墨は、茶墨に比べるとやや固い印象です。
しっかりすっても茶墨のように黒々とはなりません。
ですが、青味がかった透明感のある墨色はとても爽やかです。
変わり種として、こんなものもありますよ。↓
にぎり墨(茶墨)
練られた柔らかい墨は木型に入れて成形されるのですが、にぎり墨は職人さんが型に入れずに手で握って固めたもの。
なので、指の形やシワまでがくっきりと現れているのがユニーク。
値段が手頃なのと、木型の圧力がかからずに作られているため柔らかいせいか、墨下りが速いのが魅力です!
全国の墨のほとんどが奈良県で作られていますが、実際に「にぎり墨体験」ができる墨工房もありますよ。
(寒い冬のシーズンのみ)
硯
硯は、まず大前提として「石」で作られたものを使ってくださいね。
えー 石じゃない硯があるの?
あります。
プラスティック製のものですね。
数百円で売られている軽〜いものなので、すぐわかりますよ。
その硯の用途は、小学生が書道の時間に使うものだと思います。
書道では固形の墨ではなく墨汁を使うのがほとんどなので、硯は形だけのもの、といったところでしょうか。
硯は、けっこう1つくらいお家にあるものかもしれませんね。
前述したプラスティック製は使えませんが、子供さんが学校で使ってた硯、それがあればOKです。
硯はいちばん難しくて重要なアイテムかもしれません。
形も価格もピンキリです。
硯は、墨をするための土台となるものですから、「墨の下りが良いこと」が絶対条件です。
だから、プラスティック製などはそもそもダメなのですね。
日本産では「雨畑硯」、中国産では「端渓硯」が有名です。
どちらもブランドなので、ネットでもたくさん売られていますが、素人には真贋が分かりにくいので、あまり高いものに手を出さない方が無難かもしれません。
(ひょっとしてニセモノが売られているかもしれません)
また、ネットの写真では大きさが分かりづらいので、「え!端渓でこの値段!」と思って買ったら
「ちっっっっっちゃ!」
とびっくりすることもあるかも。
コンパクトなのは良いですが小さすぎると墨がすりづらいです。
一度はお店でお話を聞いて、硯を手に取って、本物を確かめてみるのがベストです。
これもちっさめですが。日本製の雨畑硯。
紙
・書道用の半紙
・キャンバス生地のような凹凸のあるもの
・ドーサ引きの和紙
・書道用の半紙は、ペラペラで薄いので描きにくいです。
・キャンバス生地のような凹凸があるものも、わざわざ使う必要はありません。
・「ドーサ引き」とは、「ドーサ液」(ミョウバンを溶かし、膠を加えた液体)を紙の上に引いたもので、いわゆる防水処理がされているという状態です。
水墨画はにじみを生かして表現のひとつとするため、水を吸う生の和紙が向いているのです。
・厚みのある和紙
・ほどよく水を吸う和紙
・色紙(水を吸う画仙紙)
・厚みのある和紙は、筆に慣れていなくてちからが入ってしまっても、しっかり受け止めてくれます。
・ほどよく水を吸う和紙は、水墨画表現がしやすいベストな紙です。
・初心者の場合は「色紙」が練習用に良いかもしれません。
色紙は台紙で仕立ててありますので、描いたらそのまますぐ飾ることができて便利です。
ただ、色紙にも種類があります。
市販の色紙の中で最も水墨画に向いているものは、「画仙紙」という種類(市販の色紙はこれがほとんどだと思います)です。
また、とりあえず和紙の描き心地を試したい、という場合は和紙が冊子状に綴られた練習帳タイプが使いやすいです。
色紙サイズの練習紙(画仙紙)
教室では練習用にこちらの練習紙をおすすめしています。
しっかりと厚みのある紙で描きやすいです。
水入れ
いわゆる筆洗ですね。
筆を洗うための器です。
なので、何でも良いです。
わざわざ買う必要もありません。
ペットボトルを切ったものや、ヨーグルトの器、ガラスのコップなど、お家にあるものを使ってOKです。
とき皿
墨や顔彩を移し取って、調墨するために、とき皿が必要です。
・絵や色がついたもの
・凹凸があるもの
・ヘンな形のもの(カレー皿のような・・・そんなの使いませんよね?)
・プラスティックや樹脂製のもの
・小さすぎるもの(梅皿もNGです)
・白い
・平たい
・直径10cm以上のもの
・磁器製のもの
下敷き
・色つき(黒、緑、線など模様入り)
・フェルト製ではなくよくわからない素材??
・大きすぎる(ジャマ)
・小さすぎる(紙がはみ出ます)
・白
・ごく普通のフェルト製
・サイズはB4くらい、または半紙サイズ程度
画材屋では、厚みのあるしっかりとしたフェルト下敷きを売っています。
フェルト下敷きの目的は、和紙の下に敷いて、安定をよくするためのもの。
絶対に必要、というわけではありませんし、色紙を描く際は下敷きは不要です。
書道用の黒や緑の下敷きを使っている人もいますが、できれば白が良いです。
なぜなら、墨や絵の具を紙に描いた際に、水分によって下が透けるんですよね。
その時に、白以外だと下敷きの色が透けて見えるので、実際に描いたものとそれが混ざり、色や濃淡を判断しづらくてややこしいからです。
顔彩
水墨画でも、色を使う場合があります。
墨だけでも色を使っても、描く人の好みであり自由なんですよ!
水墨画で使う色は、顔彩と呼ばれる固形の絵の具です。
私が使っている顔彩はこちら↓
和の画材メーカーでは、「吉祥」や「呉竹」などが有名で、老蘭の顔彩を扱う店は少ないんですよね。
京都の小さなお店「老蘭」。
和っぽいナチュラルな色合いが美しく、他のメーカーの顔彩にはない、絶妙な色がこの18色の中に入っているところが魅力。
他のメーカーを選んでももちろん構いません!
18色くらいがちょうど良いと思います。
それ以上増えても色かぶりするし、使う色は限られると思いますので!
タオル(雑巾)
こちらもわざわざ買う必要はありませんね。
お家で使い古したものを使って下さい。
タオルの使用方法は、筆の水分を調節したり、墨や絵の具がついた状態でも拭いたりします。
当然汚れますからお古で十分なのですね。
ただタオルは、筆の水分量を調節するために使うので、水墨画ではかなり重要なアイテムです。
水をよく吸うものを使ってください。
・柔軟剤を使用している(→水を吸わない)
・ハンカチやハンドタオルのような小さめのもの(→すぐ汚れて使いづらい)
・色つき、柄つき、装飾つき(→ジャマ)
・Tシャツや肌着などのお古(→水を吸わない)
・高級な厚手のタオル(→水を吸いにくい)
・綿じゃない別の素材(→よくわからないけどわざわざそんなの使わない方が良い)
・白
・装飾や絵柄がなくてシンプル
・綿100%
・普通のタオルのサイズ
つまり・・・→粗品や温泉のタオルのような薄手で安っぽいタオルがベスト!
理由→水をよく吸って乾きも速いから使いやすい!
最後におまけ。
さらにおまけですが、
「趣味で水墨画を描いている」
そう言うと、たいていの人が驚いて、一目置いてくれます。
経験年数や上手か下手かなどは関係ありません。
(私の場合「教えている」となると、さらに皆さんの反応は「えーすごい!」と言ってくれます)
なぜなら、その実態があまり知られていないからですね。
普通は、自分が知らない分野に対しては、「ふ〜〜ん、そうですかあ(よく知らないしなあ)」といった反応が一般的です。
でも、水墨画の場合、「なんかよくわからないんだけどスゴイ!」と思ってもらえるという素敵なメリットがあるのです!
人々のイメージが、次のようなものだからかもしれません。
・お寺の天井画や襖絵
・中国の山水のような絵
・雪舟
・日本の古い歴史がある絵
・白黒の絵
などなど、といった
日本文化を感じさせる、ちょっと珍しい絵画ならではですよね。
水墨画、面白そう、もっと知りたい!と思ってもらえたら嬉しいです。
それでは、また。
こんにちは。
墨絵師のべべ・ロッカです。