水墨画では「雀」は非常によく描くテーマのひとつです。
四季を通して、作品に登場することが多いのです。
ごくごく身近な鳥でありながら、「絵になる」雀は、私たちにとって非常にありがたい、強力な味方ですよね。
初心者の方には、難しい種類の鳥よりも、最初のステップとしてまずは雀を描いてほしい!
ということで、今回は雀の描き方をさまざまな図を使って解説していきますね。
ぜひこの機会にスズメをマスターして、楽しみながら描いて頂けたらと思います。
なお、こちらの記事で、ごく基本的な鳥の描き方をパーツごとに詳しく解説していますので、併せて参考にしてみてくださいね。↓
目次
水墨画の雀の描き方『顔』
生き物を描く場合は、ほぼどんな種類でも「顔」(頭部)から描くのが基本です。
例外としては
・後ろ向き
・角度のせいで顔が隠れている
・構図的に描きにくい
などの場合、体の一部から描くこともあります。
1番はじめに描く部位 ①くちばし
人間の顔は輪郭から描くと思うけど・・・
鳥はいきなりくちばしからなんだね!
意外に思われるかもしれませんが、どんな鳥もくちばしから描くことがほとんどです。
くちばしから描かなくてはいけない、というわけではありません。
極論、どこからどんなふうに描いても自由です。
ただ、くちばしは鳥の頭部の中で前に突出して目立つ部分であり、くちばしの角度によって顔全体の向きが決まるポイントにもなるため、最初に描いておくとラクなのです。
慣れると簡単なのでチャレンジしてみてください。
パーツごとに仕上げてゆく ②目
くちばしの横に黒目を描きます。
目はグリグリとまん丸にしないで、少しラフなタッチで。
黒目の中に少し光を入れると、イキイキ感がアップしますよ。
目に光を入れるというのは、「光に見える部分を白く残す」ということを示しています。
黒目を全部塗りつぶすのではなく、ほんの少しだけ紙の地の色を残すのです。
すると、それが目の光のように輝いて見えるというわけですね。
小さすぎてどうしても難しいな、という場合は、黒目を塗って乾いた上に、「胡粉」という白い絵の具を筆の穂先でチョンとつつくように置けば、白い光が作れます。
ただ、目を描く時に必ず光を入れなくてはいけない、というわけではなく、その時によって使い分けます。
この「白く残して光を表現する方法」は、果物(ぶどうや柿の実など)を描く際にも使われるテクニックです。
けっこう重要 ③頭
次に、頭のラインを描きます。
頭は丸くしたくなりがちなのですが、スッキリしたラインが理想です。
水墨画の雀の描き方『体』
顔ができたら、ボディの部分を描きましょう。
頭部から続くラインは、「おなか側」と「背中側」があります。
一応、「おなか」からとしましたが、これはどちらからでも良いです。
また、描くときのスズメがどんな体勢なのか、にもよりますよね。
描きやすい方から描くのがベスト。
おなかか背中か・・・ ④おなか
では、おなかから描きましょう。
おなかといっても、胸→おなかと続くラインですので、丸くするのは「胸」の部分です。
あまりおなかがぽっこり、メタボにならないように注意。
また、まん丸のボディラインを描くとき以外は、くちばしの下の所に、ほんの少し「のど」を示す線を描いておいてくださいね。
おなかに合わせる ⑤背中・しっぽ
逆に、背中から描いたら、おなかを合わせます。
全体の形ができましたね。
おなかと背中のラインが合わさるところに、しっぽを描きます。
位置が重要 ⑥足
最後に足を描きます。
足の位置に気をつけてください。
スズメを横から見たときに、一番前に出ているのはくちばしです。
それより足が前に出ることはまずないと思うのですが、胸より前に出てしまうと、尻もちをついてしまうようなアンバランスな状態になってしまいます。
足が地面に着地している位置は、だいたい体の真ん中あたりが良いですね。
水墨画の雀の描き方「3種の神器でキマる!」
3つの部分を黒く塗る
特徴その1。
スズメを描く時に、絶対忘れてはいけないのが、黒い部分です。
模様の入り方に個体差はあるのですが、
・目の周り
・ほっぺた
・のど
の3カ所が黒い。
というのがスズメの大きな特徴の1つ。
この3つの部分をしっかり黒く塗ることで、簡単にスズメらしさが強調できます。
上の図は、目の周りもしっかり強調してみたので、よりスズメらしさがアップしました。
普段は、右下の2パターンのように少し省略することが多いです。
なぜかというと・・・目の周りを黒々と描くとちょっとキツい印象になってしまうからです。
代表例がこちら。
モズは目の周りに黒い模様が入っていますね。
こんなふうに目の周りが黒い鳥はけっこういるんですよ。
ちなみに、モズとスズメは似ているようで全然違います。
モズは肉食で、くちばしも猛禽類のようなカギ型になっています。
平和なイメージのスズメと違って、モズは小さいけれど獰猛なんですね!
・「ほっぺた」と「のど」は必ず黒く塗る
・しっかり強調したい場合は、目の周りも黒くする
・目の周りを塗る場合は、黒目と一体化してしまわないように気をつけて!
雀カラーを使おう
特徴その2。
「スズメ色」と呼びたくなるような明るい茶色。
普段からスズメを見慣れている私たちの頭には、この「明るい茶色=スズメ」というイメージが定着しています。
ですから、水墨画で墨一色で描くことにこだわりがなければ、この茶色を使うのは絶対オススメです!
左が煤竹。
右が岱赭。
(ローラン顔彩)
(メーカーによって名前が変わる場合もあります)
名前を覚える必要はありませんが、左側がこげ茶色、右側が明るい茶色です。
これらの色を使えば、一気にスズメらしくなりますよ!
ふっくらさせる
先ほどは、私たちの持つスズメの「色のイメージ」について解説しましたが、次に、体型のイメージはいかがでしょう?
「ふくらスズメ」という言葉を聞いたことはありませんか?
プクーとはねをふくらませてまん丸になっているスズメ。
スズメには、そんな丸いイメージがあると思います。
ふっくらと丸いスズメは、まさに癒し系。
見ていて「愛らしいな」とほっこりしますよね。
そのほっこり感を絵に詰め込みましょう。
ふっくらまあるく描かれたスズメは、見る人を幸せな気持ちにしてくれるはず。
冬に、寒さから身を守るため、はねに空気の層を作りふくらませた状態のスズメのことを言います。
スズメのふっくらとした様子を見て、人間がつけた名前が「ふくらスズメ」なんですね。
ふくらスズメの丸まった姿を福々しいととらえ、「福良雀」「福来雀」と言い表し、家内の安全や繁栄の象徴、縁起の良いものとされてきたそうです。
水墨画の雀の描き方「失敗を避けるポイント」
くちばしの描き方
鳥は種類によってくちばしの形が変わります。
くちばしはその鳥の特徴を表している重要な部分でもありますので、適当に描いてはダメなんです!
どんなものを食べるのか、それぞれその主食とするものを食べやすい形になっているのですね。
スズメはお米や雑穀、果実、植物のタネなどから虫まで、細かいいろんなものをつついて食べる雑食性。
ですから、スズメのくちばしは、小さな食べ物をついばむのに適した、太くて短めの円錐型なのです。
最近では、人間が公園などでいろんなものを与えるので、パンなど人間の食べものも平気で食べるたくましいスズメが増えているようですね。
足の描き方
鳥の足(指)は基本4本です。
リアルに描くと怖くなります。
鳥が苦手、という方がたまにいて、その理由に「足が気持ち悪い」という意見を聞いたことがあります。
そうかー、そう言われるとけっこう鳥の足ってワイルドかも、と思いました。
なんせ、あの細い足で気に止まったり全体重を支えるわけですから。
というわけで、絵にする場合はスッとシンプルな線だけで表現するのが良いですね。
ちゃんと爪もありますが、爪も省略してOK。
地面など平たいところに立っている時は、足の指は前3本・後ろ1本という形です。
木の枝などに止まっている時は、巻き付けるようにしてつかまっています。
鳥の基本の描き方解説は、こちら↓
さまざまな角度で描く
これまで、スズメのイメージをいろいろ思い描いてきましたよね。
さて、次はスズメの「動き」について、どんなものを想像しますか?
①水辺でじーっとしてあまり動かない
②地面をチョコチョコと素早く動き回る
③大空を優雅に飛んでいる
誰もが②の、地面をチョコチョコ動くスズメを想像すると思います。
ですから、少し動きをプラスすると可愛いスズメが表現できますよ。
最初から個性的な動きを描く必要はありません。
慣れてきたらいろんなポーズを描けるようになると思いますが、初めは簡単な体勢からスタートするのが良いですね。
それに、スズメは小さくて地面をチョコチョコ動く鳥・・・というイメージを活かして、少し変化をつけるだけで十分なのです。
そこがスズメの良いところ。
上の図のように、くちばしの角度を変えるだけでも、全体の体の角度が変わってきます。
ほんの少しの変化でも動きが表現できます。
角度のバリエーションその2。
顔の傾きで、首を傾げたような表情を作れて、非常に可愛いです。
一番上は、ただ横をまっすぐ向いた状態。
左側は、顔を手前に傾けた様子。
右側は、顔を向こう側に傾けた様子。
ポイントは、目の位置です。
くちばしを基準に、目の位置を上や下にずらすだけで、顔の傾きを表現できますよ!
小さい鳥を数羽描くのもいいですね。
水墨画の雀の描き方「なぜ雀が良いの?」
さまざまな鳥がいる中で、スズメをおすすめする理由があります。
最初にスズメを描けるようになっておけば、いろんな鳥を描くためのステップになりますし、鳥への理解も深まります。
身近な鳥であるスズメは、良いところだらけの画題なのです。
雀を描くメリット・デメリット
スズメは、誰もが知る鳥なので、絵のテーマに選ぶにはとても良いです。
・誰もが知っている親しみのある鳥である
・よく見かけるので観察しやすい
・特徴があって絵にしやすい
メリットがたくさんあってうれしい鳥です。
私たちの暮らしに溶け込んでいて親しみやすいだけでなく、カラスやハトと比べるとシンプルに可愛いですしね。
デメリット・・・・は、特に思いつかないですね〜。
オールラウンドプレイヤー
スズメは特徴があるとはいえ、小さくて可愛らしく、色が茶色というナチュラルカラーなため、絵にしたときにごく自然になじみます。
さまざまな花や風景と合わせてもOKなので、役者さんでいうところの、脇役(バイプレイヤー)として優秀なのです。
脇役と言っては失礼ですね、主役も十分こなせますので、オールラウンドプレイヤー・または名脇役と言っておきたいと思います。
四季と雀
水墨画は四季の表現を大切にするので、それぞれの季節感を表すテーマを選んで描くのが、好ましいしラクでもあります
その点、日本では留鳥(⇆渡り鳥)と言われるスズメは、1年を通して見かけることのできる鳥です。
常に私たちのそばにいる鳥なため、むしろ、オールシーズン絵にしてもおかしくはありません。
春に、桜の木で花をつついて、イタズラをしているようなスズメを見たことはありませんか?
生き物は意味のないことはしないはずだから、「どうしてだろう?」とずっと疑問だったのですが、実はスズメは桜の花の蜜が大好物なんですって。
花の蜜まで食べるのかと驚きました。
でも、メジロのように花の蜜だけを食べることができないため、花をつついてちぎって食べるしかないのですね。
四季を通じて、絵になるスズメ。
日本の宝ですね。
参考までに:動画を使ったメジロの描き方はこちら↓
まとめ
今回は、スズメの描き方を、スズメの特徴とともに紹介しました。
水墨画をこれから始める・または始めたばかりの初心者の方からベテランまで、あらゆる方におすすめできるのがスズメです。
基本的な特徴をつかみ、図鑑や写真で確認しなくてもサッと描けるようになっておけば、大活躍してくれること間違いなし。
基本のスタイルを描ければ、バリエーションを増やすこともできて作品の幅もグッと広がります。
まずは、公園で観察をして(逃げられちゃいますけど)、スズメに少しずつ近づいてみてください。
可愛い作品が描けますように。
それでは、また。
こんにちは。
墨絵師のベベ・ロッカです。