こんにちは。
墨絵師のベベ・ロッカです。
アジサイは、5月末頃から6月にかけて梅雨の時期に咲く花です。
水が大好きなので、雨続きでも一番元気でイキイキしている花が、アジサイかもしれません。
ところで。
アジサイの「花」を知っていますか?
え?花って、花でしょ?もちろん知ってるよ・・?
それでは・・・・
ってこと知っていましたか?!
ええーーー そうだったの?!
てっきりその周りにあるやつかと・・・・・
みんなが花だと思っている部分は、実は「ガク」なんです。
美しくて可愛らしいアジサイの花は、
・季節感を表現できる
・水墨画らしい「にじみ」を効果的に使える
ことから、水墨画のテーマとしてもぴったりの花なんです。
今回はアジサイの描き方解説動画をベースに、詳しく紹介していきたいと思います。
(まず解説動画を見てから描いても、または描いた後からゆっくり見てもらっても大丈夫です。)
記事の最後には「アジサイの花の特徴」もまとめました。
では、参りましょう!
目次
水墨画「攻略動画」でアジサイを描こう
↑動画の冒頭では、私ジンジャーエールを作っています。
本編は1分24秒からスタートします。
①花・・・白緑 (淡い緑)、紫(仕上げに)
②ガク・・群青(青)、紫
③茎・・・黄草(緑)、
④葉・・・黄草(緑)、濃草(濃い緑)
この順番で描いていきます。
なお、今回描くアジサイは「ガクアジサイ」という種類のものです。
また、花以外の、茎や葉の部分は、「墨」で描いても落ち着いた感じが楽しめます。
でも花の部分は、やはりアジサイの魅力のひとつである濃淡をより楽しむために、「色」を使うのがおすすめですよ!
墨か色か・・花についての考察はこちらの記事で↓
アジサイの描き方〜①花〜
①花の描き方
この記事の初めにお伝えしたように、アジサイの本物の花は中心のツブツブとした小さい部分です。
白緑を使って、筆をまっすぐ立てて穂先で紙をつつくように、ツンツンと描いてゆきます。
動画でこの描き方を点描と説明していますが、点描ほど繊細に描く必要はありません。
点苔に近いランダムな描法です。
アジサイの描き方〜②ガク〜
②ガクの描き方
まず、群青を取り、そのまま次に紫を取ります。(逆でもOKです)
アジサイの描き方〜③茎〜
③茎の描き方
次に、茎を黄草で描きます。
茎のように少し幅のあるラインを描く場合、その穂先を広げます。
ガクから出ているジクをつなげて、茎にまとめていきます。
ガクの中心に紫をチョンチョンと置いていきます。
最後は葉です。
アジサイの描き方〜④葉〜
④葉の描き方
アジサイの葉は、少し大きめでしっかりしています。
シソの葉のようなギザギザがありますね。
黄草(緑)と、アクセントに濃草(濃いめの緑)を使って濃淡を作ります。
複数の同系色(例:薄い緑と濃い緑)を使って濃淡を作りたい場合は、
①はじめに薄い色を筆に取る。
②同じ筆でそのまま続いて濃い色を取る。
この順番を守らないと、濃淡は作れないので注意してください。
アジサイの葉のつき方は、対生が一般的だと思いますが、種類によって互生もあるようですね。
・対生・・・茎を中心に2枚の葉が向かい合って付いた状態
・互生・・・茎を中心に、1枚ずつ葉が交互に付いた状態
・輪生・・・茎を中心に3枚以上の葉が密集して付いた状態
葉の仕上げに葉脈を入れます。
葉脈は人間で言うと「血管」のような役割をするもの。
水や栄養などを運ぶ器官です。
バリバリとかたい葉や大きな葉、またメリハリをつけたい時なども、アクセントとして葉脈を入れる場合がありますが、必須というわけではありません。
葉脈を入れる時は、勢いよく元気な線で表現することが大切です。
アジサイの描き方〜仕上げ
葉を描き終えたら、最初に描いた中心の花の部分をチェック。
ボリュームが足りないな、と思ったらもう少し白緑(淡い緑)を足していきます。
仕上げに、紫でツンツンとアクセント。
あ〜、でも白緑の後に描いたら、紫がにじむよね・・・
この時、先に描いた白緑が乾かないうちにツンツンすると、ボワっとにじみますが、この場合はOKです。
水を感じさせる「にじみ」はこの場合むしろ大歓迎。
雨のシーズンを代表する花らしく、アジサイの美しさをより際立たせますよ!
なんとも言えない青紫がとてもきれい!
アジサイならではの色ですね♪
水墨画でアジサイを描く「注意点」と「上手く見せるコツ」
アジサイのガクの向きを工夫してみる
花の部分は点々で省略して描きますが、ガクの部分は4枚仕立てで表現します。
四角丸のような形を4つ並べて1つのガクとします。
ガクは花を囲むように円盤状に付いているので、手前・横向き・向こう側とガクの形に変化をつけることがとても重要!
簡単そうで、変化をつけるのは案外難しいものです。
コツとしては、手前のガクは4枚きれいに描いて、横向きは細く、向こう側は1〜3枚とガクの数を減らして、変化をつけることができるのでチャレンジしてみてください。
アジサイ全体のバランスを考える
全ての花を描く時に言えることですが、「花は生き物である」ということを忘れてはいけません。
命があって、生きているのです。
そのため、花を描く時には様々な工夫をして、イキイキ感が出ると良いですね。
水墨画では、きれいにまとめようとするよりも、少しフッと力の抜けた部分が出るのもよし。
また、植物の生命力を感じさせる野生味などを表現するために、思い切って描くことも時には大切です。
さて、アジサイの花を描くときの工夫は・・・?
①花の部分を傾ける
今回描くのは、「ガクアジサイ」です。
真ん中にツブツブの花があり、その花を花びらのように見えるガクが囲っています。
その形は円盤状に、さらに少し傾けてみましょう。
円盤状にすることによって、ナナメから見た感じが出ます。
さらに傾けると、動きが出ます。
花に直線を使うと絵が硬くなり、精密に描きすぎると「作り物っぽさ」が出ますので注意です。
②茎にカーブをつけ曲線で描く
アジサイは木の仲間で、どんどん増えて大きく広がっていきます。
構図にもよりますが、茎の部分はまっすぐではなくカーブをつけると、アジサイの広がりを表現することができます。
色の濃淡をきれいに出すコツ
ガクの濃淡をきれいに出すのが、アジサイを描くときのコツです。
アジサイの種類は豊富で、最近ますます個性的な色や形が増えてきました。
大きく分けて、青系とピンク系が一般的によく見かける色ですね。
その色もベタっとした一色ではなく、微妙で複雑な濃淡が美しく、それがアジサイの特徴のひとつと言えます。
下のような青と紫の2色を両方出すには、どうしたら良いでしょうか?
こんな風に2色とも一緒に出すには、青と紫をキッチリ混ぜきってしまわないこと。
青と紫をそれぞれ別のとき皿に取ります。
順番に絵の具を筆に含ませることで、水・青色・紫色が筆の中で混ざり合い、美しい色合いが生まれるのです!
①青と紫を別々のとき皿に作る。
②筆でまず青をなめて取り、その筆で続けて同じように紫をなめて取る。
⇨筆の中で2色が混ざり合って、濃淡を作り出します。
この2色取りは様々な場合に使える便利な方法です。
筆の中の絵の具の状態によって、描くたびにグラデーションの出方が変わるので、アジサイのような色のバリエーションを作りたいテーマにぴったりです。
今回の場合は、青と紫、筆に取る順番を逆にしてもOK。
※葉を描く時のように、複数の同系色で濃淡を作る場合は、必ず薄い色を先に取ります
アジサイの花の特徴と魅力
アジサイの花の種類
アジサイの原産地は、日本。
この繊細で愛らしい花が日本生まれなんですって、ちょっと嬉しいじゃないですか?
アジサイの花は大きく2種類に分かれます。
「ガクアジサイ」と「ホンアジサイ」です。
円盤型の「ガクアジサイ」が原種で、まーるい「ホンアジサイ」の方は、日本の「ガクアジサイ」がヨーロッパへ行って品種改良されたものだそうです。
私は「ガクアジサイ」の方が好みなので、こちらが原種と知って嬉しいです。
日本各地には通称「アジサイ寺」があちこちにありますし、品種改良で次々と新しいタイプを見かけますし、昔も今もアジサイは人気の花ですね。
アジサイの花びらは、前述のように、真ん中のツブツブした小さい部分。
その周りに、「こっちの方が花だと思ってた」と多くの人が勘違いしているガクの部分があります。
ガクの方は「装飾花」と呼ばれ、おしべとめしべの部分が退化してしまって、その名の通りお飾りとなってしまった花なんですって。
そして、「ガクアジサイ」は、本当の花が真ん中のところに見えていますが、「ホンアジサイ」の方は、装飾花であるガクが目立つばかりで、実際の花はその中に隠れています。
またアジサイは、花びらのように見える装飾花のガクが4枚あることから、別名「よひら」という名前も持っています。
ガクが複数枚ある派手なものもありますが、やはりシンプルな4枚がいいなあと思います。
アジサイの花の色の秘密
アジサイの花の色は、「土と水」によって決まると言われています。
アジサイには、「アントシアニン」という色素が含まれていて、この「アントシアニン」が、青、紫、赤など色が変化する決め手となっています。
「アントシアニン」といえば、抗酸化作用のあるポリフェノールの仲間で、ブルーベリーや紫キャベツ、赤シソ、葡萄など、赤系の食べ物に多く含まれることで有名ですよね。
アジサイの「アントシアニン」は、土の中に溶け出したアルミニウムに反応すると、青くなります。
アルミニウムが土に溶け出す量は、水の酸性度で決まりますが、酸性はよく溶け、中性〜アルカリ性はあまり溶けません。
なので、土に浸透した水が
・酸性だと青色
・中性だと紫色
・アルカリ性だと赤色
日本では酸性の土が多いため、青色や紫色のアジサイが多く見られるのです。
※ちなみに白いアジサイがありますが、アントシアニンを持っていないため色が変化しないのだとか。
アジサイの色は土で決まる、と聞いたことがありましたが、こういうメカニズムだったんですね。
水墨画で描くアジサイ〜最後にまとめ
【花】
・まず中心の花の部分からスタート
・ガクの部分は傾けたりガクの形を変えたり変化をつけてみる
【茎】
・筆の穂先を茎の幅に広げて、直筆でスーッとカーブをつけて描く
【葉】
・互生でも対生でもOK、葉は大きくのびのびと
【使う色について】
・茎や葉は「緑」でも「墨」でもどちらでもOK
・花とガクは色(青系がおすすめ)を使う方が良い(墨だけだと寂しい印象になる)
今回は、雨の時期に美しい色で私たちを楽しませてくれる、アジサイを紹介しました。
水墨画ならではの「にじみ」を効果的に取り入れて、濃淡を作ってみてくださいね。
それでは、また。
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