私が水墨画の道に進んで17年以上になります。
水墨画の魅力は、もちろんたくさんあります。
では、水墨画ならではの面白い魅力(特徴)はどんなところにあるのか、具体例をあげて紹介していきます。
目次
水墨画の魅力とは・・・
まず、タイトルの答えをはじめに言ってしまいます。
水墨画ならではの面白い魅力をひとことで言うと、
思い通りにいかない
というところです。
しかしこれは、私が思う部分ですので、人それぞれ感じ方は違っているかもしれません。
17年もやってまだ思い通りにいかないとは?
でも、思い通りにいかなければ、絵なんて描けないじゃない?
と思いますよね。
「思い通りに行かない」とはどういうところを指すのでしょう?
水墨画が思い通りにいかない原因『筆』
使っている道具からの検証です。
まず、筆。
筆ペンでもナイロン筆でもなく、水墨画は基本的に獣毛の筆を使って絵を描きます。
ペンや鉛筆など、紙に触れる部分が硬い筆記具ならば、自分の頭に浮かぶ線を指に伝えやすく、容易に書くことができます。
しかし、筆のように細かい毛の束の場合、ふにゃとなってしまって、
思い通りにいかない
字(書道)も難しいですから、絵ならなおさらです。
水墨画が思い通りにいかない原因『紙』
水墨画を描く紙は、通常、和紙を使います。
一部、防水加工されたものもありますが、ほとんどが水を吸いやすい紙です。
日常的に私たちが使う紙はノート、メモ帳、画用紙などいろいろありますが、ほぼ「洋紙」です。
用紙は防水加工がされているので、ペンで使った時にじまずきれいに書くことができますよね。
余談ですが、私がよく使う筆記用具の中に、無印良品のらくがき帳とメモパッドがあります。
もう何年、何冊と使ったかわからないくらいずーっとこれらを愛用しています。
これらの特徴は、藁半紙風の紙質であること。
表面はツルツルしすぎず、水を吸います。
クラフト紙ぽいナチュラルなベージュ色もレトロな感じが気に入っていて、この落書き帳&メモパッドと筆ペンの黄金コンビが、最高なのです。
よく似たようなものはありますがたいてい防水加工済みの洋紙で、この紙質と同じものはみたことがない。
何か書くもの・・・という時に、そばにこの茶色いメモたちがないと落ち着きません。
常に何冊かストックしています。
良心価格でMADE IN JAPAN。
無印良品の文房具はどれも逸品ですが、特に廃盤にして欲しくない品々です!!
・・というわけで話を戻すと、水を吸う和紙を使う絵は、水墨画ならではと言えます。
そして水を吸うとにじむので、
思い通りにいかない
紙の種類によってにじみの速度も変わったりします。
ちなみに無印の紙はすごく書きやすいですよ!
水墨画が思い通りにいかない原因『水』
そのまんまですが、水です。
水をふんだんに使うのが、水墨画の最大の特徴といえるでしょう。
水を使わない水墨画は水墨画にあらず。
いえ、そういう描法で描く人もいると思うので、絶対とは言い切れません。
でも、油彩やアクリル画とは明らかに違うのが「水」の存在の大きさだと思って間違いありません。
水を制するものは水墨画を制するとも言えます。
制するなんておこがましい。
せめて私は友達になろう、と思ってずっと水と向き合ってきました。
日本の水墨画の祖と言われる雪舟が、涙でネズミを描いたというエピソードは有名です。
涙の成分は水。
そして、固形墨を使うためには水は不可欠です。
だけど、水は偉大な自然でもあります。
そうたやすく人間の、
思い通りにいくわけがない
水墨画が思い通りにいかない原因『下書きがない』
アプリやソフトで絵を描くこと、デジタル絵(というのでしょうか)は既に広く浸透しています。
その真逆の位置にいるのが、アナログで描くことですね。
デジタルの場合の良い点は、いくらでもやり直しがきくこと。
ヒストリーでポンとひとつ前に戻れば、いま描いた線はなかったことにできます。
なかったことにできればいいのに〜
また、アナログ絵でも、油彩など絵の具を重ねて描くタイプの絵だと、乾いてから絵の具を削ったり、上から描いたりできるようですね!
それに絵の具を重ね描きできる絵は、下図という便利な武器を使えます。
鉛筆などであらかじめ描いて、その上にきっちり絵の具をのせてゆけばきれいに仕上がり、鉛筆の線も消せて一石二鳥。
お察しの通り、水墨画ではそのどれもが不可能です。
ほんの少し、あたり(印のようなもの)をつけたりすることはできますが、繊細な和紙の上に ピシーッと下図を描くことはありません。
なぜ、きっちり下図を描かないのか。
油彩のように完全に下図を上から描き消すことができないからです。
墨のにじみや紙のかすれ、筆の勢いなどが水墨画の魅力であり、下図通りにきっちり描くことではありません。
下図がないので、
思い通りにいかない
思い通りにいかないことで思ってた以上のものを生むことがある
水墨画って思い通りにいかないことだらけじゃない!
一体、どうすればいいんでしょう??
ただ、思っていた通りにならなかったから失敗か?というと、そうでもない。
そこが、水墨画の良いところ。
時に、
筆の勢いは思っていたのと違う線を描き
水の量は思っていたのと違うにじみを作り
墨の形は思ってもみないかすれを生み出します。
せんせ〜ここ!線ゆがみまくってますコレ!
(ちょっと、急いだかな。でも・・・)
この絶妙なゆがみは、描きたくても描かれへんやつですよ
どうしよう〜にじんじゃいました〜・・・
(押さえすぎ、水もやや多めかな。でも・・)
・・・ほら、乾いたらちょうどいい色になってきましたね
ここ、かっすかすなんですけど・・(しょんぼり)
(皿の墨コンディションが悪くてちゃんと筆で取れなかったか。でも・・・)
このカスレ、けっこうカッコいいですね!
ほらね!
これぞ水墨画の醍醐味です。
失敗!おもてたのと違う!
・・・んやけど、意外とええんちゃうん。
で、結果オーライなのです。
オーライちゃう時もあるけど・・・
まあいいじゃないですか
結論!水墨画は思い通りにいかなくてもOK
特に初心者ほど、「ちゃんと学ばないと」「言われた通りにやらないと」と、とてもマジメに考える人が多いものです。
最初は色々慣れなくて、力が入りすぎて余計に思った通りにいかないのですね。
だんだん水墨画のコツがわかってきて、馴染んでくるにつれて、皆おおらかに楽しめるようになってきます。
そもそも、本物そっくりに描くのが目的ではないし、手本通りにきっちり模写すべきという訳でもありません。
「あ!失敗!!」
レッスンでは時々、大幅に構図が変わる人もいます。
そんな時も、次の瞬間には
「先生がなんとかしてくれるやろ」
で結果オーライの雰囲気に。
確かにだいたいのことは任せてくれれば、なんてことありません。
スーパーポジティブ添削で、より良い絵に仕上げます。
レッスン中に、大きめの
「あ!!」
が聞こえると、「あ〜あ・・、失敗したのかなー・・・・・」ではなく
おっ♪
どないした?!
と、ちょっとワクワクする私です。
なにせ19年、現場でやって来ていますので、たいていのことには動じない強いハートになっちゃいました。
水墨画の魅力が少しでも伝わったでしょうか?
伝われば嬉しいなあと思います。
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最後に。若さを保つ水墨画
また、これも余談ですが、水墨画を描くときのような「思い通りにいかない」ということは、脳の老化を防ぐと言われています。
なぜなら、「思い通りにいかない」から、「どうやったらうまくいくのだろう」というふうに脳が必死に考えようとするからだそうです。
脳が考えて、それを指先に伝達して、という流れが活発に行われることで、体全体が活性化するのかもしれませんね。
若々しさを保てるのは嬉しいおまけです。
それでは、また。
こんにちは。
墨絵師のべべ・ロッカです。