「絵がもっと上手くなりたい・・・」
あるいは
「ちっとも上手くならない・・・」
そんな声を現場(教室)でよく聞きます。
私から見ると、生徒さんの個性はそれぞれですが、水墨画を続ける限り上達しない人など1人もいないのです。
でも、ホントに今より上手くなるのでしょうか?
15年以上、たくさんの生徒さんを見守ってきました。
何事も、続ければ必ず上達します。
私も水墨画を始めたばかりの頃には、わからないことだらけ。
うまく描けない・・・・
なんで出来ないのだろう・・・・・?
どうやったら描けるの???
・・・・負けねぇからな!!
イライラしたり自分に腹が立ったり、悩む日々でした。
余談ですが、
「ああーーー だいぶと負けず嫌いなんですね〜」
と、水墨画を通して自分の性質にも気づくことも。
絵は面白いです。
自分の内面が必ずどこかに現れるんですよ!
教室では、生徒さんの絵を見ながらそんなところにも注目しています。
さて、上達するためには、ひたすら描く練習をするだけではなく、いろんな角度からのアプローチを試すことも大切です。
この記事では、これから水墨画を始めたいと思っている初心者や、今よりもっと上手く描きたいなあと考える人に向けて、「上達するためのポイント」を3つ紹介します。
私自身、振り返ってみて「効果があった」と実感している方法でもあります。
参考にして頂けると嬉しいです。
水墨画上達のための①道具選びの考え方
スタート地点の道具選びはとても大切です。
初めての人にはとても難しいと感じられると思います。
初心者に限らず、種類が非常に多いので、慣れている人でも悩むところかもしれません。
最初に結論から言ってしまえば、
初心者は良い道具を使いましょう。
・・・ムズカシ・・・・・
これで終わるとヒドイので、解説をしていきます。
私の例で言うと、「形から入る」タイプなので、初めに道具をちゃんと揃えたい派です。
なので、信頼できそうなプロの人が使っている道具を見つけて、同じものを買うようにしています。
信頼できるプロを探すのがまず難しいわ。
同感。
私の場合は、ひとまず早く始めてみたいので、直感ですね!
とりあえず適当なものを選んで、失敗して買い直した経験も何度もあります。
それで学んでからは「とりあえず買い」はしないようになりました。
あと、せっかく使う道具なので、ワクワクしたりときめいた方が楽しいじゃないですか。
愛着が湧くと大切に扱うようにもなります。
大切に扱えば長持ちするので、コスト面でも良いですよね。
普段、水墨画を始めたいという人に、道具選びについてアドバイスを求められた時、次のようにおすすめするようにしています。
・私と同じく「ちゃんと揃えたい派」の人へ
→自分の使用している道具を紹介する
・「できるだけお金をかけたくない節約派」の人へ
→必要な道具を伝え、自分で揃えてもらう(100円ショップでも可)
どちらでもかまいません。
2つをブレンドするのもアリです。
それぞれのメリット・デメリットも補足説明します。
最初にちゃんと道具を揃えたい人の場合
メリット1:水墨画をすぐ始めることが出来る
おまかせだと自分で考えたり悩んで選ぶ「手間」が省けます。
お店へ足を運んで選んだりするのって、けっこうめんどくさくないですか?
そういうのが楽しい!という人ならばラッキーですが、お店で商品について説明を聞いても、イマイチわからないもの。
そうしているうちに時間が経つし、そんなことで「描きたい」という気持ちが萎えてしまうのはとてももったいないことです。
経験上、何かを始めたいと思った時に、すぐ始める!というのはかなり重要なことだと考えています。
その理由は、悩んでいる時間は結果として空白で、何も生み出さないから。
人生は短いです!
私がサッサとプロのおすすめ道具を買うのも、そういった理由からですね。
メリット2:プロのおすすめなので、安心して使える
②の場合は、私がプロ側の立場ということで考えます。
道具は、実際に私が長年使っているものですので、自信を持っておすすめできます。
それぞれの道具の特徴・良い点・詳しい使い方なども、質問されると説明できますから、安心かなと思います。
次にデメリットです。
デメリット1:道具の良し悪しの判断ができない
これは、どの道具についても言えることです。
初心者の場合、経験が浅いと、どれが使いやすいかどれが使いにくいのかが、わかりません。
そのため、せっかく良い製品を使ったとしても、はじめから「おお!これは素晴らしい」という実感が持ちにくいと言えます。
色々使ってみて、比較して判断できるようになってゆくので、当然ですよね。
なので、これはもうひとつのタイプの人にとってもデメリット、つまり初心者には全員当てはまることとも言えますね。
デメリット2:初期費用はある程度かかる
物事の価値観は人それぞれ。
お金の場合、特に違いを感じます。
私のレッスンでおすすめする初期道具(私も使ってるもの)を揃えると、計算してみると 25,000円〜30,000円ほど。
これが「エッ高い!」と思う人と「あ、その程度なんだ〜」と思う人と・・・いろいろです。
なので、これは正直何とも言えませんね。
とりあえずお金はかけずにスタートしたい人の場合
メリット1:初期費用を抑えてスタートできる
自力で少しでも安く手に入れたい!という人には、必要な道具の種類を伝えてあとはご自分で揃えてください、となります。
最近では100円ショップにも使えそうなものが売っていますので、道具によってはおすすめする場合もあります。
工夫次第で、コストを安くすることは可能です。
メリット2:自分で納得して選ぶことが出来る
私もこだわる時にはこだわる方ですが、自分が無知な領域ではアドバイスを頂く先輩に従います。
経験がなく何も知らない状態では、自分で判断することはできませんからね。
それと逆に、あくまで自分で考えて、全部自分で決めたいという人もおられるので、その場合は自由にして頂いてます。
でもそこまでこだわりがあれば、そもそも私に質問などしないかもしれないですね。
デメリット1:粗悪品の場合がある
モノにもよりますが、「安かろう悪かろう」は、ある程度覚悟しておいて下さい。
中でも筆、硯、墨、紙は、水墨画の中では文房四宝と呼ばれる特に大切な道具です。
良くない道具をそのまま使い続けると、感性も鈍りますし(何が良くて何が悪いのかがわからなくなる)、当然絵の完成度にも影響します。
デメリット2:時間や手間がかかる
種類がたくさんあるので、迷うことがあるかと思います。
全部自分で選ぶ場合は、「予算」などで基準を設けておくのも手かもしれませんね。
水墨画上達のための②役にたつ習慣
カメラでらくらく撮影
絵のネタとして簡単に保存しておける
スマホが普及してから、カメラで写真を撮る機会が増えた人は多いと思います。
美味しそうなスウィーツをパシャ。
きれいな花をパシャ。
とりあえずパシャ。
あれもこれもパシャ。
(パシャが禁止のところもあるので、注意してくださいね。)
パシャが日常的になった人も、そうでもない人も、気軽に写真を撮れる環境は良いものです。
絵のネタを保存しておくことができます。
例えば季節ごとの花は、その花の咲く時期にしかみられないものです。
外を歩いていると、いろんな場所でたくさんの花を見ることができますよね。
なので私の場合は、定番の季節の花は必ず撮影しています。
写真はどんどんたまって、欲しい画像を探すときに、あれ?あれ?となりがちです。
アルバム機能などを使って、こまめに種類わけしておくと便利ですね。
写真で、「構図」の練習をしよう
それに、写真というのはとてもよい構図の練習になります。
昔は、まずスケッチをするのが定番でしたが、今は便利なカメラがあります。
上記で、ネタを保存しておくと書きましたが、何か良い被写体を見つけたらパシャ、はい終わり、ではなくてじっくり見ていろんな角度から撮影してみてください。
例えば花であれば、きれいな花1つをを真正面からパシャ、というのと、ツボミが横についている花をセットでナナメからパシャ、では雰囲気が変わってきます。
いろいろ撮ってみて、これがいいなと思うものを選んだらあとは削除しておきましょう。
でないと、ものすごい量になってしまいますので。
それから、写真を撮ることばかりに夢中にならず、ちゃんと目で観察もしてくださいね。
水墨画上達のための③レッスンでの効率的な学び方
3つ目は、今実際に教室へ通っている人、あるいはこれから習おうと思っている人に向けてのお話です。
レッスンで大切なこと2つ
所作を観察する
絵画のジャンルの中でも珍しい水墨画の特徴のひとつとして、「運筆技法」があります。
筆をどのように使うか、筆に墨をどのように含ませるか、「動き」がとても重要なカギとなることです。
ということはつまり、
描かれて出来上がっていく紙の上の絵の部分だけではなく、筆をどのように扱っているかという「所作の部分」も重要なのです。
私の教室での例です。
私のレッスンでは、その日の画題を描く前に「実演タイム」があります。
「実演タイム」では、私がその画題のポイントなどを実際に描きながら説明します。
生徒さんたちは机の周りに集まって、私が描く様子を見るのです。
その時に、面白いことに生徒さんの行動は大きく2つにわかれます。
「私の所作を見ている人」
と
「私の所作を見ていない人」
です。
絵のような創作物は、
原因(道具とその扱い方)と、過程(描き方)があって=結果(完成)
につながります。
技法を使う運筆が多い水墨画の場合は、結果を見て、逆算してどういう過程を経たのかを想像することも重要です。
私の所作を見るということは、道具の扱い方と運筆全体を観察することになるので、スムーズに頭に入ってきやすいのです。
ところが、所作を見ていないと、いきなり完成品(結果)だけを目の当たりにするので、魔法か何かで目の前に突然モノが現れたような状況になってしまうのですね。
魔法みたい!と言われることもあって、それはそれで楽しんでいます♪
観察したら、真似る
よく、
「葉っぱをもう1回描いてもらえませんか?」
「あれ?もう1回」
「もう1回だけ・・・」
とお願いされることがありますが、描くのは一瞬の出来事です。
パッと出来上がったら終わり。
なので、「そこだけ」見ていてもわからないんですよね。
私は普段、生徒さんから
「この部分がわからないんで、描いてください」
と言われたら、
「ではまず(あなたが)描いてみてください」
と先に描いてもらいます。
その人の墨の取り方、筆の持ち方、動かし方をチェックするのです。
それでうまく描けない理由が全てがわかります。
私が描くまでもなく、その人の所作の中で悪いところを正してアドバイスするだけで、すぐうまくいく場合もあるんです。
それくらい所作は大切なもの。
筆の持ち方、速度、向き、角度などに目線を移せば、面白いし発見があるのぜひ観察してみて欲しいです。
種と仕掛けが見えるようになれば、魔法ではないことがわかります。
あとは、それを真似るのです。
ここがとても重要です!
水墨画上達のための考え方〜最後に。
今回は、上達のヒントとなる3つの考え方を紹介しました。
最後にまとめです。
①道具選び
→・信頼できるプロのアドバイスを聞き、物によっては「100円ショップ」などの利用も可。
→・水墨画の道具は繊細なものばかりなので、使い心地もしっかり確認しましょう。
②カメラで写真撮影を習慣にしてみる
→良い被写体を見つけて、さまざまなパターンで撮影するのは「構図」のための良い練習になります。
③レッスンの時に先生の所作を観察して真似る
→まずはじっくり観察して動きをつかんでくださいね。
水墨画の場合、特に重要な③の観察と模倣について、最後にあと少しお話させてください。
私が水墨画を始めたばかりの頃、何もわからなくて師匠の絵を描く様子をいつもじーっと観察していました。
紙の上を筆がスーッとすべり、墨で描かれた葉がキラリと光るのです。
その光る瞬間を見るのがとても楽しみでした。
あ、また光った♪
あんなちっこい線を描くのに、体全体が揺れたよな?
い、今の動きは何だ?!
(カッコええー)
それらの動き全てがまさに魔法に思えました。
今ではベテランの生徒さんに
「べべロッカ先生、大先生と描き方がそっくり!」
と言われることがあり、え?!と驚くほどです。
私の観察と模倣は長い過程を経て、結果を出したのかもしれません。
できない、できない、で悔しがっていた私ができたのだから、あなたもきっとできます。
手本となる良い師を見つけてくださいね。
まずはマネからです!
それでは、また。
こんにちは。
墨絵師のべべ・ロッカです。