水墨画で菊は「四君子」のひとつとされています。
菊・・・というとわりとシブい花のイメージがあるかもしれません。
私はこの名前のせいかな?と思うのですが
「菊」=漢字がなんかシブくないですか?
英語だと、chrysanthemum(クリサンセサム)。
お花で、〜マム、というと菊のことですよね。
この英語名から、スプレーマム、ポットマムなど名付けられたり、菊の種類はとっても豊富なのです。
今回は、そんな菊の描き方を紹介したいと思います。
大きかったりや丸い形やいろいろありますが、ベーシックな形の菊(小菊)を、花の描法を「線描き」で解説していきます。
目次
【水墨画の花】動画レッスンで菊を描く
水墨画3分動画を見ながらすすめていきましょう。
【水墨画の花】菊を描くー花ー線描きの描法
「コギク」を描きます。
使用する色:
・花の線描き、茎、葉:墨
・花の花芯:黄、濃黄(=こいき:オレンジ色のことです・・画像では少し暗く見えます)
・花の色:黄
花芯のポイント:
筆に2色の色を取る時は、黄をまず穂先に含ませその次に濃黄(オレンジ)という風に順番に取ります。
そうすると、キッチリ混ぜ切ってしまうより、絶妙なグラデーションが楽しめます。
「薄い色→濃い色の順番で取る」と覚えておくと便利です。
花びらの線描きは、筆の穂先を使って、リズムよく筆をすすめましょう。
1・2というふうに、2筆(にひつ)で1枚の花びらを作ります。
1・2、1・2、、、と描いていきますが、線を引く方向は、中心から外へ、外から中心へ、どちらでもかまいません。
両方取り入れると変化がつけられるのでオススメです。
花と花が重なっている部分がありますね、
あ、計算ミスでぶつかっちゃったんだね〜
これは、ワザとなんですよ
今回の花は2つだけですが、たくさんの花を描く時に、よく使うテクニックです。
こうやって花同士をくっつけるように描くことで、ワサワサと賑やかな感じや立体感を表現しているのですね。
線描きができたら、花びらを塗ります。
黄を使って、軽いタッチで置くように彩色します。
これで、花の部分ができましたね!
【水墨画の花】菊を描くー茎ー
次に茎を描きます。
筆の穂先に墨を取り、筆を真っ直ぐ立てて、線を引きます
ガクも描いておきます。
ツボミにはしっかり描きますが、花はほぼ見えない角度なので、省略します。
次は、ラストの葉っぱです。
【水墨画の花】菊を描くー葉ー
まずは、花の近くの方にある小さな葉を一筆(いっぴつ)で描きます。
次に、大きい葉を描きます。
その前に、ちょっとここで葉っぱの描き順解説です。
下の図を見てみてください。
この菊は大きい葉が4枚ついています。
菊の葉は、(種類によって形は変わりますが)一般的なもので5裂、つまり1枚の葉の先が3〜5つに分かれている形状のタイプです。
5つに分裂している部分のうち、一番外側の大きいところから描きます。
(画像で赤い色で1となっているところ)
葉っぱの2番から5番まではどうしたらいいですか?
1番大きいものさえ描ければ、あとは根元に向かって中サイズ、小サイズ、と描き進めばOKですよ!
これをふまえて、葉っぱの描き方を見てみます。
1枚の葉が完成したら、他の葉も順番に描いていきます。
ホントだ
順番が決まってる方が悩まなくていいしラクかも!
けっこうルールを決めて作業を進めることは多いですよ
では葉が全て描けたら、1枚ずつ葉脈(ようみゃく)を入れていきます。
葉脈を通って、水分や栄養分が運ばれ、葉をしっかりと支える土台の役割もあります。
葉脈は、必ず入れなければいけないというものではありません。
また、花や葉の種類によって線の入れ方は変わるし、その絵の雰囲気に合わせて「有り」「無し」を決めます。
【水墨画の花】線描きのポイントとメリット
今回の菊の花は線描きで表現しました。
花の種類にもよりますが、水墨画ではこんなふうに線で描く場合と面で描く場合があります。
それを下記のように言います。
・鉤勒法(こうろくほう)・・・輪郭線を描く方法
・没骨法(もっこつほう)・・・輪郭線を描かず彩色して描く方法
こちらの記事では、朝顔の花を2種類の描法で描き分けてみました↓
次に、線描きで花びらを描くときの注意点を解説します。
こちらをよく見てください。↓
花びらの形をよく見ると、全く同じ形をしたものは1枚もありません。
これは、1・2のリズムで2筆(にひつ)で描いているからです。
この、2回で1枚の花びらを描くメリットは、皆違う形になるため、変化が生まれることと、イキイキした表現を生み出すことができることです。
【水墨画の花】線描きの花を描く時によくある失敗は?
では、花びらの線描きの際に、やってしまいがちな失敗とは・・・?
失敗というほどでもないのですが、良くはない例を3つ挙げてみました。
NG1:作り物のような花になる
2筆(2回)ではなく、1筆(1回)で花びらを描いてしまう
上の図で、OKの花と比べると、1回で花びらを描いた様子は、花のイキイキ感がなく、子供が描いたような花になっています。
NG2:変化に欠ける
同じ形の花びらが並んでしまう
一見悪くなさそうですが、やはり少し単調に見えてしまいがち。
NG3:菊の花に見えない
花びらがとんがってしまう
意外と多いのがこの3のケース。
1・2のリズムで描かないと!と意識しすぎるせいか、2本の直線で花びらを描いてしまい、ふっくら感を出せないというものです。
こうやって見てみると、線描きの方が難しそう・・・
確かに。
でも、それこそが水墨画の味わいであり他にない魅力とも言えますよね。
だからこそ、菊は四君子の1つとされているのですね。
その通りですね。
たかが、1本の線と安易に考えるのではなく、その線に命を吹き込み、濃淡、強弱、リズムなどを大事に考えるのは、絵画のジャンルでも水墨画ならではといえます。
【水墨画の花】菊はいろんな花に応用できるので便利
菊の花の描き方は、別の花にも応用できるんですよ。
大輪のタイプなど個性的な形を除けば、菊の花のパターンはわりとノーマルな形状をしています。
花を特定せずに「野の花」として描きたい場合や、簡単にハガキなどに一輪の花として描く場合など。
この菊の線描きのパターンは、便利なテンプレートとして使えます。
さすが四君子のメンバーですね!
【水墨画の花】菊は日本の国花ってご存知でした?
日本の国花は桜。
もうひとつが菊です。
「菊の御紋」でおなじみ、菊の花をデザイン化した菊花紋章は、現在は皇室専用の紋章と制定されているため、一般の使用は禁止されているそうです。
華やかで楽しいお花見や、春の象徴である桜は、老若男女みんなの国民的アイドルなイメージがあります。
一方、菊に対してシブくて重厚なイメージがあるのは、そのせいかもしれませんね。
さすが四君子!
【水墨画の花】最後に。格式のある菊の花の描き方まとめ。
菊の花の描き方ポイントまとめです。
【菊の花の描き方ポイント】
・花びらは2筆(2回)で、リズム良く描く。
・なるべく変化や濃淡をつけて同じ花びらが並ばないように。
【菊の葉の描き方ポイント】
・葉は1枚が3〜5つに分かれた形。
・いちばん外側の大きな部分から描く。
・葉脈を入れると、葉がイキイキとした感じになる。
四君子の1つであり、日本では格式のあるイメージが強い花、菊ですが、その種類はとても豊富です。
親しみやすいものからとても可愛らしいもの、色も様々あってとてもカラフルです。
菊といえば=ご先祖様にお供えする
だけじゃないんですね。
菊はスプレーマムが好きで時々買いますが、けっこう強くて長持ちするので、コストパフォーマンスが良いのもお気に入りです。
絵にすると、花の持つ格式高さがそのまま表現できるような気がしますね。
ぜひ1・2のリズムで、イキイキとした菊を描いて頂きたいです!
それでは、また。
こんにちは。
墨絵師のベベ・ロッカです。