突然ですが、
筆で、塗りつぶした丸を描けますか?
まる?
ぐりぐりぐりって塗っちゃえば簡単
ぐりぐりぐりでもよいのですが、それだとベタッとした感じで、濃淡が出ないですよね。
そっか・・最初薄くしてあとから濃くする
2度塗り!
2度塗りしてもいいんですか?
2度塗りする場合もあります。
が、小さな実の場合、何度も塗っているとどんどんボワッとにじんでしまいますよね。
水墨画で「丸」といえばいろいろパターンがありますが、よく描くものが「植物の実」などです。
筆で丸く描くのは簡単そうで、やってみると「あれっ?」となるもの。
今回はぶどうの実を例に、筆で丸く描く方法を解説してみたいと思います。
また、
・ぶどうの実に濃淡をつけるコツ
・ぶどうの房をバランスよく描く方法
も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
目次
水墨画の簡単な描き方:ぶどう
動画は2分38秒です。
(解説はなく音が鳴ります)
では動画をベースに描いていきましょう。
ぶどうの実の描き方
私が使う色は、こちらの顔彩を使用しています↓
動画「ぶどうの描き方」より解説します。
【使用する色】
実・・・黄・黄草(緑色)
ぶどうの実の色は、ミドリ・エンジ、ムラサキ系、または墨で描いてもOK!
まず、実を描いていきます。
筆をやや寝かせた状態でスタート。
筆にまず黄色を取り、そのまま続けて黄草を取ります。
そうすると、黄と緑の濃淡ができます。
まず筆の穂先を使って半円(のような形)を作ります。
筆は、寝かせることによって筆の側面が使えるので、面(丸くするための)を描きやすくなります。
次に、筆の穂先を
丸っこい形になりました。
実は丸いもの。
ではまん丸にしないとダメ?
そんなことはありません。
確かに、きれいなまーるい形で実を描く方法やスタイルもあります。
でも、ラフなタッチで描く方法もあり。
水墨画の場合も、今回のように「なんとなく丸い」感じに描くのはよくある表現です。
丸をつぎつぎに描いていきます。
後ほど、ぶどうの房の描き方ポイントを紹介しますが、赤い線のアウトラインを参考にしてください。
凸凹となっています。
房の最後は、こんなふうに実のつき方を意識しながら、形を作っていきます。
ぶどうの実の仕上げは、墨でチョンチョンと点をつけていきます。
軸も少し描いたら、ぶどうの房の出来上がりです。
ぶどうの葉の描き方
【使用する色】
・葉:墨
ぶどうの葉は、ちょっと個性的。
1枚の葉は、筆の側面を使うようにして、何回かに分けて描きます。
大きさの違う葉も角度を変えて描きます。
ぶどうのつるの描き方
ぶどうはつるを這わして、いろんなところへ巻きつきます。
筆を縦に持って描きます。
さらに巻き付くつるは、サインを描くような運筆で。
細いつる、軽やかに描きたいですよね。
そんな時は、手の側面を紙につけて腕ごと動かすようにすると、安定して線が描きやすくなりますよ!
(下の画像を参考にしてください)
ぶどうの実を丸く描くコツ・濃淡を作るには?
それでは、ぶどうの丸い実の描き方をもう少し詳しく解説します。
丸の描き方:まず線描きしてみる
面で丸を描く前に、まず線だけで丸を描いてみてください。
ただの線の丸なら、簡単に描けますよね。
これを面で描くには?
実は、面で描く方法も、基本の動きとしては線描きと同じなんです。
ただ、筆の穂先でぐりぐりと塗りつぶして丸を描くと・・・・
こんなふうになっちゃいます。
丸い形にはなりますが、濃淡はなく、まあ普通の丸ですよね。
では、濃淡を作る描き方は次を参考にしてください。
濃淡を作る丸の描き方:その1
濃淡ができました。
濃い部分をよくみると、小さな丸ができています。
線描きでは筆を立てて、○と描きましたが、面を使う場合も筆の腹を使いつつ、筆の穂先では小さく○を描く動きをしています。
なので、線描きと基本は同じということなのです。
また、濃淡が出る秘密ですが、筆の穂先ではなく下半分に含まれた水分がポイント。
筆を立てて穂先だけで描こうとすると、穂先には絵の具がしっかりついているので、絵の具の部分だけがブワッと紙に移動して、下のようなベタッとした丸になってしまいます。
しかし、筆の腹の部分を紙に付けるように筆を寝かせて描くと、腹の部分の水分が活躍して、絵の具とうまくなじんでくれるため、濃淡が生まれるのです
線描きは筆を立てる=穂先を使い細い線で○を描いている
面描きは筆を寝かせる=穂先で小さな○を描きつつ、筆の腹(水分を含んでいる)も一緒に動くので、墨と水が混ざって濃淡ができる
濃淡を作る丸の描き方:その2
(動画のぶどうの実は主にこちらの描き方をしています。)
濃淡のできる丸の作り方について、2つの筆の動き方を紹介しました。
1回で描くか、2回に分けるかの違いだけで、どちらも仕上がりは同じです。
筆の根元までたっぷり墨を含ませて黒々と描く書道と、濃淡を大事に描く水墨画との大きな違いがここなのですが、
水墨画は、水のチカラなしでは、濃淡を作ることができません。
そして、濃淡を作るためには、水が活躍できるよう、筆の使い方を工夫することが大切なのですね。
ぶどうの房を描くコツ:自然な形とは?
ぶどうを描くときには、ひとつひとつの実の形も大切ですが、全体=「房」のバランスもとても大切!
次は房のバランスの取り方について解説していきます。
絵になるぶどうの形って?
↑上の画像は売り物として育てているぶどうです。
プリプリの実がしっかりついていて美味しそう!
買うならこんなぶどうですね。
ですが、実がぎっしりついて房全体のシルエットがふっくらしたぶどうは、絵になりません。
作り物っぽく見える恐れがあります。
↓一方、下は野生でついたぶどうの実です。
実のつき方がバラバラで、こちらは売り物にはならなそう・・・
でも、絵になるのはこちらのぶどうです!
スーパーに並んだきれいな房のぶどうより、実がアンバランスについたぶどうをモデルに描いた方が、よりリアルさが表現できて良いのですね。
ぶどうの房を描くコツ:その1
まず、実の形ですが、丸い実(前にある実)と欠けている実(横からチラッと見えている実)をバランスよく組み合わせること。
↑上の画像の赤い丸が、前にある実です。
こんなふうにいくつか丸い実を描いておきます。
そして、その赤い実の横からチラッと見えている実が黒い欠けた丸を描き足していきます。
こうやって実の形に変化をつけると房の立体感が生まれます。
ぶどうの房を描くコツ:その2
次に、房全体の形について。
外側のシルエットを赤い線で辿ってみました。
こんなふうに実のつき方を凸凹ににすると、自然なぶどうの感じが出ます。
きれいに丸くまとめるよりも、アンバランスな感じ・不自然な形を作ることで、むしろ自然に近いバランスが生まれるのです!
矛盾しているようですが、これはぶどうだけに限らず、いろんなテーマで応用できる考え方ですので、参考にしてみてください。
伊藤若冲という江戸時代の絵師は、リアルな動植物をとんでもなく細かく描いたことで有名です。
彼は、自然の持つリアルさをとことん観察・追求して、葉の虫喰いまで絵に描いて表現しました。
優れたデザインセンスも持ち合わせていた伊藤若冲のセンスには脱帽です。
↓伊藤若冲を有名人にするきっかけとなった「葡萄図」はコチラで紹介しています。
まとめ
今回は、ぶどうを描き方を解説しました。
ぶどうの描き方をマスターすれば
・丸く描く
・実の房をバランスよく描く
・きれいにまとめようとしすぎず、自然な形を描く
という表現ができるようになります。
丸い実や、実の房をバランスよく描けるようになれば、グッとテーマが広がりますよ!
↓こちらは小さめの丸い実「南天」の描き方です
実ものは描くのに慣れるととても楽しいので、ぜひ描いてみてくださいね。
それでは、また。
こんにちは。
墨絵師のベベ・ロッカです。