
こんにちは。
墨絵師のベベ・ロッカです。
いきなりですが、猫好きな方。
猫グッズを見るとつい買っちゃいませんか?

猫のデザインってかわいいしおしゃれだし、みんな大好きですよね。

(フフ♪)
今回は、そんな猫好きの方に見て欲しい、浮世絵の猫を紹介したいと思います。
文字通り絵になる猫は、昔から絵画のテーマとして人気でした。
江戸時代に一般庶民の間で流行った浮世絵の中にも、猫はたくさん登場します。
浮世絵は、日本絵画のジャンルのひとつで、水墨画とも縁のあるもの。
斬新なアイデアや手法、構図など、日本だけではなく海外のアーティストにも大きな影響を与えた浮世絵は、堂々と自慢すべき日本の芸術なのです!
それでは、そんな浮世絵に登場するかわいくてユニークな猫をどうぞ!
目次
猫好き絵師といえばこの人【歌川国芳】

歌川国芳「自画像」
歌川国芳は(1798-1861)江戸時代の浮世絵師です。
武者絵や妖怪絵、戯画などさまざまな絵を描いた国芳ですが、彼は大の猫好きでも有名です。
実際に猫をたくさん飼っていて、作品にも猫を多く描きました。
上の画像は、国芳の自画像ですが、いますいます、猫たちが。
国芳の猫好きは、「私ネコ好きなんです〜可愛いですよね♪」というレベルでおさまるものではありませんでした。
画塾で絵を指導しているときも、常に着物のふところに猫を忍ばせていたといいます。
最愛の猫が行方不明になると、嘆き悲しみ、猫が死んだ際は、供養して戒名をつけ、猫用の仏壇を作ってまつりました。
これは、ホンモノの猫好き確定ですね!
猫好きのエピソードも含め、個人的に国芳はすごく好きな絵師です。
弟子入りして、猫だらけの画塾に通いたいですね〜。
*昔習っていたピアノの先生のお宅では、ワンコたちがグランドピアノのまわりを陣取っていました。
座っているイスの背もたれと私の背中の間に、ぴょん!と飛び乗ってきたりしてそれはもう可愛くて癒されました。
其のまま地口猫飼好五十三疋

猫がいっぱい!
この絵は、歌川広重の「東海道五十三次」シリーズのパロディです。
タイトルの意味を解説。
・地口=言葉遊びの1つ、語呂合わせのことです。
・猫飼好=これは字のままの意味でしょうね。読み方が、猫=みゃう、となっているところがかわいくて国芳のユーモアを感じます。
・五十三疋=「〜五十三次」のパロディですね。
12パターンを、語呂合わせの解説付きでピックアップしてみました。
ちょっと強引?というのもありますが、猫に免じてOKです。
では参りましょう。
四日市

【四日市(よっかいち)】
=よったぶち(寄ったぶち)
ぶち猫たちが集合した(寄った)様子ですね。
1匹だけ首輪をしています。
白須賀

【白須賀(しらすか)】
=じやらすか(じゃらすか)
子猫たちが親猫にじゃれていますね。
しっぽを使ってじゃれさせてやるか。
じゃらすか?
鳴海

【鳴海(なるみ)】
=かるみ(軽身)
ヒョイとかごから身軽な様子で出てきました。
猫って狭いところに無理やりギュッと入ったりするのが好きですよね。
宮

【宮(みや)】
=おや(親)
親猫にベターっとくっついた子猫。
くっ付きたいんですね。
「みや」は音の感じで、そのまんまミャア〜というのもいけそうですが、ダメですか?
見付

【見付(みつけ)】
=ねつき(寝付き)
国芳は斑猫( 白地に茶や黒の斑(ぶち)が入ったぶち猫)がお気に入りだったようですが、この猫はきれいなトラ模様ですね。
鞠子

【鞠子(まりこ)】
=はりこ(張子)
このにゃんこは張子なのでおもちゃですね。
かわいい張子もぶち猫です。
舞坂

【舞坂(まいさか)】
=だいたか(抱いたか)
親猫がおなかにしっかり抱いているのは、子猫でしょうね。
ごろんと寝転んで幸せそうな表情に、こちらもつられて笑ってしまいます。
平塚

【平塚(ひらつか)】
=そだつか(育つか)
今度は、背中を向けた親猫、顔の表情は分かりませんが、かわいい子猫を気にかけている様子は伝わりますね。
京

【京(きょう)】
=ぎやう(ぎゃう)
猫がネズミをつかまえています。
ぎやう、とは何でしょうか?
ネズミの声らしいです!
「ぎゃあー!(助けてー)」ってことですね。
草津

【草津(くさつ)】
=こたつ(炬燵)
これはベストなコンビネーション。
ほんとは、こたつの中に入っちゃうパターンですよね。
江戸時代にこたつってあったんですね。
二川

【二川(ふたかわ)】
=あてがう(当てがう)
どういう状況かな〜とようく見ると、母猫のおなかの下にもぐり込んだ子猫がいます。
乳をあてがっているのですね。
子猫たちがかわいいですね。
隣でなぜかシャーってなってる猫が気になります。
藤枝

【藤枝(藤枝)】
ぶちへた(ぶち下手)
このぶち猫は、ネズミ狩りが下手なのかな?
ネズミたちが踊っています。
複雑な表情で去ろうとしている猫を見て、からかっているようにも見えますね。
猫の当て字
次は、猫たちが集まって、ひらがなで文字を作りました。
「当て字」です。
猫はポーカーフェイスでひょうきんな行動を取ったりしますが、そういう動画とかを見ていると本当に可愛くて面白いですよね。
すました顔でのポージングが絶妙にユニークです。
当て字「かつを」

これは素晴らしい!
猫ならではの曲線的なポーズと言えましょう。
カツオと猫たちの共演ですね。
どこがどうなっているのか・・うまいこと合体できるものですねえ!
当て字「なまづ」

猫とナマズが共演して、「なまづ」という字を体現しています。
ところで「な」と「ま」は良いけれど、最後のは・・?
漢字の「川」に見える。
これは「万葉がな」で、「川」を「つ」と読んだらしいです。
また、なまず=なまづとも表現したそうです。
普通にひらがなで「づ」の方が簡単やん、と思いますが、あえて万葉がなを入れてみるところも粋ですね。
づの点々は、まり(猫のおもちゃかな?)ですしね。
わたし的に、「川」の真ん中棒の猫がツボです!
意外!?猫好き確定【月岡芳年】
月岡芳年(1839-1892)は、幕末から明治にかけて活動した浮世絵師です。
役者絵、風俗画、美人画などあらゆる絵を描き、中でも「無惨絵」で有名で、非常にショッキングな絵のためか「血まみれ芳年」の異名を持ちます。
本当に血がドバー!のホラーな絵が多いです。
独特のタッチと雰囲気を持ち、上手いです。
最後の浮世絵師とも言われていますね。
ちなみに、師匠は歌川国芳です。

さて、血まみれ芳年も猫を描いていました・・・!
師匠の影響で、みな猫好きになったのでしょうか?!
猫とたわむれる女性たち
東京自慢十二ヵ月 六月 入谷の朝顔 新ばし福助

こちらは、芳年の美人画シリーズの1枚。
朝顔を育てている女性、さて猫はどこに・・・?と探してみると、いました!

着物の柄になっていたんですね。
猫の模様や首輪もカラフルでおしゃれ。
これはかわいい。
猫好きにはたまらない一品ですね。
風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗
次も、美人画の連作です。

芳年の美人画はいずれも美しい錦絵(浮世絵で、多色刷りのカラフルなもの)で、江戸時代後期から明治時代にかけての、様々な女性を描いたもので、芳年の美人画の中でも代表作と言われています。
こちらは女性の猫への愛情がとってもよく伝わる1枚ですね。
猫の方もそれが十分わかっている、というような優しい表情。

セリフを想像すると、
「○○ちゃ〜〜〜ん」
「かわいいにゃ〜〜ん」
このあたりでしょうか。
今も昔も、かわいいペットに対してはこうなっちゃいますね!
古今比売鑑 薄雲

猫好き女性が続きますが、ラストはこちら。
この方は、元禄時代、実在した「薄雲」という花魁がモデルになっています。
観察すると、着物の柄だけではなく簪にも猫の飾りが!!


猫づくしのファッションを身にまとい、大好きな猫ちゃんを抱っこしている薄雲さん。
デザインの猫はみな後ろ向きってのが良いですね。
なんかこう、日本のキャラクター好きのルーツが知れますよね!
実際の彼女も大の猫好きだったようです。
お茶目な猫たち大活躍【河鍋暁斎】
河鍋暁斎(1831-1889)は、幕末から明治にかけて活動した浮世絵師です。
戯画や風刺画を得意としました。
この方も歌川国芳の門弟でした。
猫好き国芳、優秀な絵師を何人も育てていたのですね。
絵の教室は猫だらけ!

こちらの絵は、暁斎が子供のころを思い出して描いたと言われる『暁斎画談』の1枚。
絵筆を持ち子供に絵を描いて見せている人物が国芳です。
教わっているのは暁斎自身なのかな?
よくみると、あちこちに猫がいますね・・・国芳先生の机の上やふところの中までも!
ふところ猫は、机の上の猫とドギャーンとたわむれていますが、紙をやぶいたり、筆立てとか硯とかひっくり返してしまいそうでハラハラしますね、大丈夫でしょうか?
でも、わかるんです。
ついふところに入れちゃうんですよ、可愛くて!
あったかいですしね。
猫好きの人ならばごく自然に思い当たる光景ですよね。
(私は犬バージョンですが、ふところ犬やってました)
画才があり、貪欲に絵を学ぼうと努力した暁斎は、「画鬼」と呼ばれたそうです。
血みどろだったり鬼だったり、浮世絵師はなかなかヤンチャな人が多そうですね。
出たー!化け猫!

草むらからヌーーと現れた巨人ならぬ巨猫!
しかし!その顔は憎めない感じ・・・・なんだかユニークじゃないですか?
サイズ的には化け猫枠と言えましょうが、かわいいやん。
それにしても、多くの人の目に止まるのはこちらでは。

「この写真を見てひとこと」
と、お題を出したくなるようなリアクション。
浮世絵師って皆人間描写がすごく面白くて、リアルですね。
暁斎も、国芳から「人の動きをよく観察をしろ」と言われ、町へ出てスケッチのための人間観察をしていたそうです。
北斎と同じだ、と思いました。
巨匠も描いた猫【歌川広重】
偶然にも、歌川国芳ラインの絵師ばかりが続きました。
この方もやはり歌川。
世界の歌川広重(1797-1858)は、江戸時代の浮世絵師です。
広重といえば「東海道五十三次」シリーズをはじめ、美しい情緒あふれる日本の風景を描くことで有名で、ゴッホ、モネなど西洋画家にも大きな影響を与えました。
名所江戸百景「浅草田甫酉の町詣」

夕暮れ時。
遠くに富士山。
田んぼのあぜ道を歩く、人の行列。
そんな風景を、窓越しに座った猫が眺めています。
タイトルの「酉の町詣」とは、11月の酉の日に行われる鷲神社のお祭りのことです。
絵の中の行列は、浅草の鷲神社から帰る人々なのですね。
この部屋の主は、吉原で働く女性。
それを示すヒントのように、遊女の持ち物である簪や手拭いがさりげなく置いてあります。
様々なモチーフが散りばめられた粋な構図はさすが広重!
外を眺める猫に哀愁が感じられます。
浮世画譜ー広重のレアものスケッチ帳

美しい傑作風景画のイメージしかありませんが、こんな可愛らしいスケッチ帳を制作していたのですね。
スケッチ帳には、他に町民の風俗、仕草、様々な生き物、植物などなどが描かれています。
この猫たちはほんの一部ですが、よく見かける猫らしい仕草が可愛いですね。
広重も猫を飼っていたのでしょうか?
広重の版本は珍しいようで、しかもこれ、復刻版ということで購入できるようです。
豆本なので小さいです。
まとめ
今回は、浮世絵に登場する猫たちを紹介しました。
戦国時代などと違って、江戸時代から明治時代にかけて活躍した浮世絵師は、普通の町人たちの娯楽ために絵を描きました。
みんなが興味を持って、好きになるテーマを作品にしたのです。
猫の絵はまさに、うってつけですね。
紹介した絵はほんの一部ですが、楽しんでいただけたら何よりです。
それでは、また。
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